シリーズ講座『舞台芸術の現在』
Vol.4「〈マルチメディア的〉アメリカ」
2009年10月28日(水) 19時〜21時
内野 儀
(東京大学大学院総合文化研究科教授)
《所 感》
マルチメディアとは何か。そもそも演劇は視覚、聴覚に接触するマルチメディアであり、それをあえてマルチメディア的舞台芸術と呼ぶのは、記録された動画が舞台に用いられている場合をいう。メディアという概念の特性、舞台芸術と技術との関係を解きほぐし、ニック・ケイの文章を参照しながら、メディアの増殖性、輻輳性、回帰性について解説した。またヴィデオテクノロジーが発達するにつれて、現代美術と舞台芸術がジャンル横断しながら変容していく過程の検証を行った。1965年以降ヴィデオテクノロジーが一般化したが、舞台に記録映像を用いる当初の意義は、メディアという媒介性を舞台に持ち込むことで、パフォーマーの現前性をより明確にするという試みであった。
グローバリゼーション下、さまざまな技術が日常化し必要不可欠となっている今日、舞台芸術という対話の場において、より違和感のない感情の伝達方法とは何か。舞台は現実に対応するメディアとしての機能をいかに果たしうるのか。舞台表現の根源的方法に立ち戻り、現在活躍するアメリカの舞台芸術の分析を行った、数多くの、とても貴重な示唆をいただいた講座であった。
記録:塩田典子(早稲田大学大学院文学研究科芸術学(演劇映像)専攻修士課程修了)
1.はじめに
今日、いわゆるマルチメディア的演劇、上演が主流であるかどうかはともあれ、ある先鋭的な思想の問題とリンクしながら進んできている。戦後絶えず行われてきたそのような活動が、日本ではアメリカのコピーライトの意識が高いせいか手に入りにくく、なかなか映像で紹介されなかった。本講座ではウースターグループなどいくつかの事例を、思想的問題とともに語り起していきたい。
2.マルチメディア
<メディアという問題>
- 視覚性と記録を可能にする媒体としてのメディア
(フィルム→映画→ヴィデオという展開)
- 声のメディアとしてのラジオ
- インターネット
90年代以降ゼロ年代に入り、アーティストの関心にのぼる