講座の内容記録 2009

舞台芸術論
シリーズ講座『舞台芸術の現在』
Vol.1「管理国家とクリエイティビティ―シンガポールの現代演劇」
 
2009年9月18日(金) 19時〜21時
滝口 健
(シンガポール国立大学)

《概 要》

シンガポールという国のことを、私たちはどのくらい知っているだろうか。本講義は、シンガポールの 現代演劇を通して、シンガポールという国について理解を深めるものだった。シンガポールの歴史の 説明の随所で紹介される演劇作品は、その時々のシンガポールの社会を映し出している。20年前には、 フィリピン人メイド問題を扱った作品について、上演劇団メンバーが告発・逮捕・拘留された。今日では 同じ問題を扱った新作が、政府の支援を受けている。その間には、シンガポールの芸術政策の大きな 転換があった。芸術を国家のイメージ形成に活用し、才能ある人・人的資源をひきつけたいという都市 国家シンガポールの生き残り戦略が背景にある。

演劇作品においても演劇を取り巻く芸術政策においても、どうしても情報が欧米に偏りがちな中にあって、 アジアの都市国家・シンガポールの演劇と社会についてまとめられた本講義の内容は大変貴重な内容となっている。
記録:中村美帆(東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻博士課程)
1.シンガポール概要
  1. 面積は698平方km(東京23区とほぼ同程度)
  2. 国土は島で、2つの橋でマレーシアとつながっている
  3. 人口は2008年現在で460万人
    1番多いのが中東系で59%、マレー11%、インド7%、その他2%、加えて外国籍が約101万人、人口の22%を占める
  4. 多文化共存で公用語が4つ:中国語、マレー語、タミル語、英語
    できるかぎり4ヶ国語を併記して平等に使う方針をとっている
  5. 第三次産業の割合が21.7%と高い一方、第一次産業は1%未満で非常に少ない
  6. 第二次世界大戦後にマレーシアから分離独立
<作品紹介:Separation40(2005・公演記録映像)>
ネセサリー・ステージ(シンガポール)/ドラマラボ(マレーシア)共同制作。
マレーシアからシンガポールが分離独立して40周年になるのを記念して両国のカンパニーが共同制作。 40年を経てお互いだいぶ違う国になっていたことを比べながらそれぞれの現状を笑う。 さまざまな言語がまざりあうセリフ構成になっている。
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