『地域社会と芸術』
Vol.1 「創造性と他者との関係性」
2009年10月20日(火) 19時〜21時
田野 智子
(NPOハート・アート・おかやま代表理事、アートリンクセンター岡山代表)
《概 要》
ハート・アート・おかやまの活動もその中のアートリンク・プロジェクトも、サイトスペシフィックな
個人同士が向き合うことから始まっている。障害のある人もない人も、子どもも大人もアーティストも、
個であることに還って個人と個人でじっくり向き合うと、あるがままなだけで結構面白いところが
わかって楽しくなってくる。そうやって他者と丁寧に付き合うところから、クリエイションが生まれる。
お互いを認め合うつながりも生まれてきて、さらに楽しくなってくる。
あるがままのうちに全ての人が芸術家たりうる。それは決して容易ではないかもしれないけれど、
とても楽しいことだ。そうやって一人ひとりが生き生きすれば、普段の何気ない日常がゆるやかに
置き換えられていって、結果として社会が変わっていく。
記録:中村美帆(東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻博士課程)
はじめに
「アートを「世界観の拡大」と捉えると、アーティストは「概念を作る人」といえ、一方障害のある人は、
生まれながらに我々を揺さぶる「概念」を持っている。常に新たな価値の創造を行うアートの現場が、
広く地域社会と繋がることで、障害のある人や高齢者、子どもなど自由な表現を行う人を含めた地域の
エンパワーメントが図られる。その価値の提案、普及活動こそが企画者及びアーティストの役割である。
障害の有無や年齢や分野を超えた人々のそれぞれの真摯な日常をテーマに、彼らの密接な交流から
生まれる新しい価値を、地域ごとの特色ある伝承文化との比較から見出そうと、さまざまなプロジェクトを
展開している。(世田谷パブリックシアターウェブサイト掲載の講座案内文より)」
法人化したのは最近だが、活動自体はもう10年になる。今日は、NPO法人ハート・アート・おかやまの活動と
アートリンク・プロジェクトを通して、日頃の活動について、やっていることを中心に気づきを織り交ぜつつ話したい。
まず、ハート・アート・おかやま
元小学校教員として、「学校には障害のあるなし含めていろんな子がいるけれど、
社会に出てどうなるかが想像できない」と感じていた。障害を持った人は、面白い要素を
持ったまま大人になっているケースが多い。しかしクリエイションとしては面白いけれど、
活動の場が施設内部に限られていたり、コミュニケーションがうまくいかず職場の困ったちゃんに
なってしまったりもしている。そういう人たちともっと面白くアートを通して付き合っていければ、
と思ったのがきっかけだ。混じり合う場があればコミュニケーションも培われる。
混じり合う場を作り出すためにいろんな場所でワークショップを実施した。受け入れて
もらいやすかったのは教会、お寺、銀行…公共の場に近いところだ。ワークショップを
やっているうちに、アーティストがもっと継続的に関わりたいと言い出した。継続的に集まれる場が
必要になり、商店街の一角の2階を借りることになった。そこをギャラリーにしたり遊び場にしたり
バーにしたり…関わっている人がつぶやいたことを実行できるような、フラットな関わり方が
できる場を目指している。