世田谷パブリックシアター ハラスメント防止ガイドライン

2024年1月10日
世田谷パブリックシアター

1.はじめに

「劇場は広場」は、世田谷パブリックシアターの開場当時からの大きな理念です。人々が集まり、人々が語らい、人々が歌い、人々が踊り、人々が物語る。私たちは、もう一度、劇場がその為の場所であることを思い出さなくてはなりません。

私たちの劇場に参加する全ての方々が、互いに尊重し、理解し合い、安心して表現や交流を楽しめるようにすることが大切です。ハラスメントはそのような環境を阻害し、個人の尊厳や安全を脅かすものです。私たちは、ハラスメントの発生を絶対に許さず、劇場が健全な心の拠り所となるために、全力で取り組んでまいります。

劇場は、表現する者と鑑賞する者が交わる場でもあります。その相互作用が芸術の本質を形成し、心に変化を与えます。真に心を開き、感動し合える芸術体験を生むためには、ハラスメントのない良好な環境が不可欠です。すべての参加者が安心して芸術を楽しむことのできる素晴らしい場になるように取り組むと同時に、劇場に集う全ての方々にたいしても協力を求めてまいります。これは、ハラスメント防止に取り組む私たちの決意です。


2.ハラスメントに対しての姿勢

ハラスメントは、個人としての尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であるとともに、本人の能力の有効な発揮を妨げ、社会的評価にも影響を与える深刻な問題です。

世田谷パブリックシアターは、ハラスメントに対して厳然たる姿勢を持ち、その防止に全力を尽くします。ハラスメント防止に向けては、劇場全体の意識を高めるための教育・研修を実施し、ハラスメントの予防と対処に関する情報を周知徹底します。また、ハラスメント相談窓口の整備や報告・対応手順の明確化にも取り組んでまいります。

私たちは、ハラスメント防止に対する取り組みを常に改善し、より安全で風通しの良い環境を提供できるよう努めてまいります。関わる皆さまの協力とご理解をいただきながら、より素晴らしい劇場文化の普及と発展に貢献していきます。


3. 劇場で行われる様々な事業の整理とハラスメント対策について

◆主催事業

世田谷パブリックシアターが自ら企画して実施する事業においては、ハラスメントの発生を許さない毅然とした意識を持ち、全ての人が尊重される環境が確保されるよう心掛けます。私たちは、劇場が芸術の創造や上演が行われる場であると同時に、ハラスメントのない安全な場所であることを強調し、事業の運営においてハラスメント防止に向けた取り組みを徹底して行います。

各事業によって、関わる団体やスタッフ、俳優、参加者等のバックグラウンドや関与方法は異なります。そのため、それぞれの事業の特性やニーズに応じたハラスメント防止策を検討し、実施します。

  1. 意識啓発と教育:ハラスメントの定義や影響を周知し、理解を深めるための啓発活動を実施します。ハラスメント防止への理解が浸透することで、良好な創作・上演環境を築きます。また、啓発活動を通じ、互いのコミュニケーションを促進し、理解と共感を深めます。相互に尊重し合い、オープンなコミュニケーションが芸術の創造にもプラスに影響を与えることを目指します。
  2. 報告・相談窓口の整備:ハラスメントの報告や相談を匿名でも行える窓口を整備し、参加者がひとりで抱え込むことなく相談できる環境を整えます。適切な対応が行われることで、早期に問題の解決に取り組みます。

◆提携・貸館公演

提携公演・貸館での施設利用においても、主催者・施設利用者の方々と協力し、ハラスメント防止の重要性を共有してまいります。施設利用者に対しては、世田谷パブリックシアターのハラスメント防止ガイドラインの趣旨を理解し、それに基づいた形で事業を実施していただくよう働きかけてまいります。

ハラスメントが発生した場合には、世田谷パブリックシアターは当該施設利用者に対して適切な情報提供や責任ある対応を求めます。ハラスメントの対応に適切な取り組みが見られない場合にはまず警告と指導を行い、それでもなお真摯な取り組みがおこなわれない場合には、劇場運営上の支障を考慮し、施設使用許可を取り消す場合があります。


4.パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、モラルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの定義

  1. パワーハラスメントとは、関係の優位性や自らの権力や立場を利用した言動であって、業務上の必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境を害することをいいます。立場の上下の関係性に関わらず、パワーハラスメントに該当する場合があります。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しません。パワーハラスメントに該当するかは言動が、嫌悪の感情や相手に不利益をもたらす目的によるものか、言動の内容が業務の改善のために合理的なものか、言動の内容に被害者に対する人格的な攻撃を含んでいないかどうか、どのくらい継続しておこなわれたか、また頻度がどの程度であったか等を検証して判断されます。
  2. セクシュアルハラスメントとは、性的性質を有する言動(性的な関心や欲求に基づくもの、性別により差別しようとする意識、性的指向や性自認に関する偏見 等)により相手に不利益を与えること又は性的な言動により相手の就業環境を害することをいいます。また、相手の性的指向又は性自認の状況にかかわらないほか、異性に対する言動だけでなく、同性に対する言動も該当します。また、直接的に性的な言動の対象となった被害者に限らず、性的な言動により就業環境を害されたすべての関係者を含むものとします。
  3. モラルハラスメントとは、言葉や態度、身振りや文書などによって、相手の人格や尊厳を傷つけたり、精神的に傷を負わせて、相手が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、現場の雰囲気を悪化させることをいいます。うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。
  4. 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、職場において、上司や同僚が、従業員の妊娠・出産及び育児等に関する制度又は措置の利用に関する言動により従業員の就業環境を害すること並びに妊娠・出産等に関する言動により当該従業員の就業環境を害することをいいます。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントには該当しません。

5.禁止行為

  1. 全ての関係者は、他の関係者を業務遂行上の対等なパートナーとして認め、健全な秩序と協力関係を保持する義務を負います。また、自己の言動に注意を払い、以下の行為を行ってはなりません。なお、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることに十分留意し、以下の行為はあくまで一例であることを認識してください。
  2. パワーハラスメント
    1. 殴打、足蹴りするなどの「身体的攻撃」
    2. 人格を否定するような言動をするなどの「精神的な攻撃」
    3. 自身の意に沿わない人に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離するなどの「人間関係からの切り離し」
    4. 長期間にわたり、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で、業務に直接関係ない作業を命じるなどの「過大な要求」
    5. 合理的な理由もなく自宅待機を命じる行為、「もう仕事はするな」と言い放置する行為などの「過小な要求」
    6. プライバシーを過度に詮索したり口出ししたり、他者の性的指向・性自認や病歴などの機微な個人情報について本人の了解を得ずに周囲に暴露するなどの「個の侵害」
  3. セクシュアルハラスメント
    1. 性的及び身体上の事柄に関する不必要な質問・発言
    2. わいせつ図画の閲覧、配付、掲示
    3. うわさの流布
    4. 不必要な身体への接触
    5. 性的な言動により、他者の就業意欲を低下せしめ、能力の発揮を阻害する行為
    6. 交際・性的関係の強要
    7. 性的な言動への抗議又は拒否等を行った人に対して、解雇、不当な人事考課、配置転換等の不利益を与える行為
    8. その他、相手に不快感を与える性的な言動
  4. モラルハラスメント
    1. 他者の容姿、身体的特徴、人間性や能力を否定・侮辱し、相手の尊厳を傷つけるような言動
    2. 他者を人種、国籍、セクシャリティなどの属性などにより差別する言動
    3. 他者に不安や恐怖を与え、そのことで相手を支配・コントロールしようとする言動
    4. 心理的な圧力や脅迫、嫌がらせ、仕事の妨害など職場環境を悪化させるような言動
  5. 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
    1. 妊娠・出産、育児・介護に関する制度や措置の利用等に関し、解雇その他不利益な取扱いを示唆する言動
    2. 妊娠・出産、育児・介護に関する制度や措置の利用を阻害する言動
    3. 妊娠・出産、育児・介護に関する制度や措置を利用したことによる嫌がらせ等
    4. 妊娠・出産等したことにより、解雇その他の不利益な取扱いを示唆する言動
    5. 妊娠・出産等したことに対する嫌がらせ等
  6. 立場の弱い者がハラスメントを受けている事実を認めながら、これを黙認する権威者・その場の管理責任者の行為

6.相談窓口

世田谷パブリックシアターの主催事業・自主事業では、事業ごとにハラスメント相談窓口を設置します。実際にハラスメントが起こっている場合だけでなく、その可能性がある場合や放置すれば就業環境が悪化するおそれがある場合、ハラスメントに当たるかどうか微妙な場合も含め、広く相談に対応し事案に対処します。相談には公平に、相談者だけでなく行為者についても、プライバシーを守って対応します。

相談者はもちろん、事実関係の確認に協力した方に不利益な取扱いは行いません。

相談を受けた場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実が確認できた場合には、被害者に対する配慮のための措置及び行為者に対する措置を講じます。また、再発防止策を講じる等適切に対処します。

以上

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