芸術監督・白井晃

『劇場は、広場。』

劇場はもっと開かれた場でありたい。
それが私たちの願いです。
人が集い、語り、交流し、心通わせる。
こんな場が、今、随分と少なくなってしまいました。
だから、私たちは「劇場は、広場。」であり続けたいと考えています。
これは開場から一貫した理念です。
距離があると、人は他者のことを身近に感じることができなくなり、心無い言葉で傷つけたりします。それは、距離があるからです。
目の前に、「あなた」がいること。そして、その「あなた」と語り合い、触れ合い、感じ合うことができれば、誤解も、諍いも、傷つけ合いも避けることができるはずです。
劇場は、一方通行の場所ではありません。共に考え、共に感じる場です。そして、「これから先の時間」を生み出し、育んでいく場所でもあるのです。


『わたしは、この世界にどう生きるか。』

2025年度の世田谷パブリックシアターの主催公演において、このことをテーマに考えました。
新しい年が明け、世界の政治のパワーバランスが大きく変化しようとしています。この変化は、私たちの世界にどのように影響を及ぼすのでしょうか?
その中で「わたし」は、どう生きていくのか。その答えなどありません。ただ、この世界から目を瞑り、耳を塞いでしまっては、その変化の犠牲になるばかりです。その変化と対峙し、見つめ、しっかりと耳を傾けることで、「わたし」の生き方を見つけたいと思うのです。


『アートファーム』

「芸術」とは、日頃の生活から感じ得ない、感情を呼び起こすものです。
共感や驚き、悲しみや喜びを感じて、今の世界や、社会を見つめ直すことができます。
その「芸術」を生み出す場として、世田谷パブリックシアターは、劇場の扉を開いていきたいと思います。
「これから先の時間」のために、新しい種を蒔き、見守り、育てていく。
劇場は、常に開かれた「アートファーム」なのです。

劇場は、広場。
劇場は、語り、
劇場は、交わり、
劇場は、考え、
劇場は、遊び、
劇場は、創り、
劇場は、生み出す。

劇場は、あなたのためにある場所です。

世田谷パブリックシアター芸術監督

白井 晃(しらい あきら)

演出家・俳優、世田谷パブリックシアター芸術監督。京都府生まれ。
早稲田大学卒業後、1983~2002 年、遊⦿機械/全自動シアター主宰。演出家として独立後は、ストレートプレイから音楽劇、ミュージカル、オペラまで幅広く手掛ける。世田谷パブリックシアター開場時より多くの作品を手掛け、当劇場の企画制作公演では、『偶然の音楽』音楽劇『三文オペラ』『ガラスの葉』『マーキュリー・ファー Mercury Fur』『レディエント・バーミンRadiant Vermin』『メルセデス・アイス MERCEDES ICE』音楽劇『ある馬の物語』『Medicineメディスン』『セツアンの善人』ほか多数演出。第9・10回読売演劇大賞優秀演出家賞、05年演出『偶然の音楽』にて湯浅芳子賞 (脚本部門)、12年演出のまつもと市民オペラ『魔笛』にて佐川吉男音楽賞、18年演出『バリーターク』にて小田島雄志・翻訳戯曲賞などを受賞。

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