舞台芸術と著作権・契約/実務力がつく5日間 2009
2009年12月8日(火) 19時〜21時
福井 健策
(弁護士/日本大学藝術学部 客員教授)
《所 感》
本レクチャーでは、法律を実際に適用するさいにどうしても曖昧な部分が出てきてしまうことを理解した上で、万が一に備えた対策を考えなくてはならないのだということを学んだ。少なくとも創作側が無自覚に著作権侵害を行って莫大な損害賠償が発生しないように、制作担当者は気を配らなくてはならないと感じた。同時に、自由な創作活動を制限しないような環境づくりや、周囲との調整が必要なのだとも思った。また文化や芸術は時代の流れと共に変化していくものであり、自分なりの基準を持つことが大切なのだということを感じた。そしてそれに伴い、著作権も時代によって範囲や解釈が変わっていく為、決めつけずに幅広い解釈が必要であるということを認識した。作品創造は、素晴らしい作品ができて観客が感動して終わるのではないということを肝に銘じて、制作者ができるだけ権利問題を企画段階から創作後に至るまで気を使う必要があるということを強く感じた。
記録:鶴野喬子(世田谷パブリックシアター研修生)
(以下、一部の抜粋)
「現場必修!最新トピック2009」12月8日(火)19時〜21時
最終回は、最新トピックをまとめた。
まずは、この不況で相手先倒産も珍しい例ではない。倒産の種類は法的倒産と事実上の倒産があり、前者は裁判所が関わる倒産。相手先倒産になった場合、重要なのはとにかく現場に行くことである。「つぶれそう、危ない」という危険信号を感じた時点で、状況をつかみ情報収集しなくてはならない。情報収集した上で、債権の回収、チケット回収など被害拡大の防止、契約解除などといった関係終了の手続を必要に応じて速やかに行う。時間との戦いになる。契約書に倒産のための条項を加えるといった予防策をとることも大切だ。
次に公演の放送、DVD化、ディジタル配信の利活用については、映画のように権利が一元化されていないためトラブルになりやすい分野でもある。外国音楽を使用する場合は、複雑な手続きが必要となる場合がある。技術の発達により、これまで想定されない各種の二次使用法なども発生し、契約が重要になる。
指定管理者制度は2003年に導入され、自治体の「公の施設」が、民間団体に運営が委託される。指定手続・管理の基準・業務の範囲は自治体の条例で規定されている。(244条の2,4項)協定書は、現在のところ自治体に有利なことが多いため、リスクを含めてのビジネスでもあることは念頭に入れるべきである。協定書のポイントは本質的には業務委託契約と同様で、指定期間、業務の範囲、報告・調査・必要な指示、修繕費など不測のコストや事故などのリスクの負担、管理業務の結果生じた知的財産権、その他を重視して締結する。
公益法人改革に伴い、法人と団体選びの基礎知識も最新トピックとしてとりあげる。新設された法人は公益社団法人、公益財団法人および一般社団法人、一般財団法人であり、従来の社団法人、財団法人は5年以内に公益法人が一般法人に移行申請をしなくてはならない。公益社団法人、公益財団法人は公益があると認められた団体で、税制優遇などメリットはあるが認められるためのハードルは高い。長期的な事業ではない場合など、法人でない任意団体、実行委員会などの構成も検討する。
最後に2009年後半の話題でもあった「事業仕分け」について取り上げ、奥山緑プロデューサーも加わって会場とディスカッションした。メディアで取り上げられた事業仕分けでは、芸術助成は急務ではないとされ、さまざま財団や事業が予算縮減もしくは「国の事業としては廃止」といった議論となっている。文化セクター側では、芸術文化になぜ金を出すべきか、理論武装できていない場面が多く見受けられた。また、文部科学省に寄せられた意見書約14,000通のうち、約11,000通が科学技術に関するもの、約2,000通が教育に関するもので、文化に関するものは約1,000通であった。
予算縮減の理由として成果のフォローアップがされていないといった意見もあげられているため、説明責任の道筋やノウハウも今後大切になるだろう。