講座の内容記録 2009

舞台芸術論
舞台芸術と著作権・契約/実務力がつく5日間 2009
 
2009年11月24日(火) 19時〜21時
福井 健策
(弁護士/日本大学藝術学部 客員教授)

《所 感》

本レクチャーでは、法律を実際に適用するさいにどうしても曖昧な部分が出てきてしまうことを理解した上で、万が一に備えた対策を考えなくてはならないのだということを学んだ。少なくとも創作側が無自覚に著作権侵害を行って莫大な損害賠償が発生しないように、制作担当者は気を配らなくてはならないと感じた。同時に、自由な創作活動を制限しないような環境づくりや、周囲との調整が必要なのだとも思った。また文化や芸術は時代の流れと共に変化していくものであり、自分なりの基準を持つことが大切なのだということを感じた。そしてそれに伴い、著作権も時代によって範囲や解釈が変わっていく為、決めつけずに幅広い解釈が必要であるということを認識した。作品創造は、素晴らしい作品ができて観客が感動して終わるのではないということを肝に銘じて、制作者ができるだけ権利問題を企画段階から創作後に至るまで気を使う必要があるということを強く感じた。
記録:鶴野喬子(世田谷パブリックシアター研修生)
(以下、一部の抜粋)
■「契約(2):実践編」11月24日(火)19時〜21時
契約のポイントはタイプや状況によって多岐にわたるが、ライセンス契約ならば、まず「ライセンスの対象」があげられる。例えば、対象が戯曲だけなのか、衣装や振付までなのか、どこまでライセンスを受けたかは明確にする必要がある。二点目は利用の範囲。期間・地域・方法・独占性について確認する必要があるだろう。期間は有期なのか永久なのか、または有期でも更新はどうされるのか、地域については国内か全世界に対応するのかといったことが留意点となる。方法では、翻訳、翻案、アレンジを行うか、ビデオグラムまで含むかなど。第三点目は、対価。一括(買い取り)か、印税(ロイヤルティ)が主な方式。ロイヤルティ方式の場合、売り上げが確定するまで入金が待たされないように、前払金や最低保証金を条項に盛り込むことも重要である。

その他、公演委託契約のポイントの第一点目は「委託業務の内容」。誰が企画、制作、舞台運営、権利処理、票券、広報宣伝などの業務を行うのかを明記しておくと良い。二点目はどこまでの経費が報酬でカバーされるか。実費や予測外の追加費用の扱い、助成金・協賛金の扱いなど。第三点目は公演の二次利用がどこまで許され、権利の処理には誰が責任を持つか、ほか。

最後に、国際共同契約の基本的な注意点をあげる。英文文書のタイプとしては、Deal Memo(覚書、短いものを指すことが多い)、Letter Agreement (レターアグリメント、手紙形式の契約書)、Long form Contract といった複数の呼称があるが、いずれも基本的には拘束力のある「正式契約」であって、Deal Memoを「仮契約」などと訳すのは危険だ。

共催の場合は大きく分けて、お互いに負担金を出し合って、利益を比率に基づいて分配する「負担・分配比率」方式と、仕事を分けて金もそれぞれが責任を持つ「費目・責任分配」方式がある。とくに「負担・分配比率」方式だと、予想外の経費をコントロールするために、予算表で上限を決めることが重要となる。