舞台芸術と著作権・契約/実務力がつく5日間 2009
2009年11月10日(火) 19時〜21時
福井 健策
(弁護士/日本大学藝術学部 客員教授)
《所 感》
本レクチャーでは、法律を実際に適用するさいにどうしても曖昧な部分が出てきてしまうことを理解した上で、万が一に備えた対策を考えなくてはならないのだということを学んだ。少なくとも創作側が無自覚に著作権侵害を行って莫大な損害賠償が発生しないように、制作担当者は気を配らなくてはならないと感じた。同時に、自由な創作活動を制限しないような環境づくりや、周囲との調整が必要なのだとも思った。また文化や芸術は時代の流れと共に変化していくものであり、自分なりの基準を持つことが大切なのだということを感じた。そしてそれに伴い、著作権も時代によって範囲や解釈が変わっていく為、決めつけずに幅広い解釈が必要であるということを認識した。作品創造は、素晴らしい作品ができて観客が感動して終わるのではないということを肝に銘じて、制作者ができるだけ権利問題を企画段階から創作後に至るまで気を使う必要があるということを強く感じた。
記録:鶴野喬子(世田谷パブリックシアター研修生)
(以下、一部の抜粋)
■「契約(1):基礎編」11月10日(火)19時〜21時
前回までに著作権を終え、3・4回では契約編に入る。
文化事業に関わる契約のタイプを分けると、主要なものは「ライセンス契約(既存作品の利用に関わる)」、出演等の「業務」契約、新たな作品の「委託」契約の3つとなる。ライセンス契約は、音楽や戯曲の上演・演奏許可、原作の舞台化などに交わされる契約である。許可を与える人を「ライセンサー」、許可を受ける人を「ライセンシー」と呼ぶ。業務の契約は、出演、スタッフとの契約などがある。新たな作品の「委託」契約は、作品の制作委託や新作音楽や戯曲の委嘱となり、その後の利用許可とセットであることが多い。主要な契約の他には、共同事業の契約、資金の調達に関する契約といった幅広い契約が業務上発生する。
契約を守らないと、相手方は履行の強制、損害賠償、契約の解除ができる。契約書、合意書、確認書などさまざまな用語があるが中身が問題であり、さらに書面に残されていなく口約束であっても理論的には契約は成立する。しかし、後のトラブルを避けるために、契約「書」を作るべき場合は少なくない。契約があったかどうかを証明する書面であり、曖昧な人間の記憶を修正するためにも契約書が有効となる。
契約書については、「(それは)読むためにある」「内容が明確で網羅的である」「契約交渉はコストという感覚を持つ」の3点は覚えておくべきことである。契約書は理解・納得の上でサインしなくてはならない。