『求塚』稽古場レポート Vol.1

 こんにちは!『求塚』の演出助手の若月です。SePTメールマガジンとホームページ読者の皆さんに、これから週1回を目標に『求塚』稽古場レポートをお送りします。

 鐘下版『求塚』は、ニュータウン(新興住宅地)と隣接した古い村(龍神村)が舞台。レポート初回の今回は、このふたつの地区を結ぶ要となる楠木(くすのき)家の人々からご紹介しましょう。楠木家にはふたりの娘がいて、その父親は楠木武雄(品川徹さん演じる)。母親ミツ子はすでに亡くなっていて、いまは下の娘の月子(吉本多香美さん)が面倒をみています。どちらかといえば地味な性格の月子には、ニュータウンの学校・宮田学園の美術教師をしている夫・忠司(ただし・藤井びんさん)がいます。そして、月子の姉・輪子(りんこ)は「ある事件」を起こし服役中…。

 今日はここまで。次回には、この楠木家に深く関わってくる登場人物たちをじっくりご紹介します。緊張感あふれる鐘下作品の裏側でどんな稽古が進んでいるのか…乞う、ご期待!  若月理代

 
吉本多香美(月子役)
 
品川徹(楠木武雄役)
 
藤井びん(忠司役)
 
作・演出:鐘下辰男
 

『求塚』稽古場レポート Vol.2

 こんにちは!ふたたび、『求塚』の演出助手の若月です。『求塚』稽古場は、本日も快調に進んでおりま〜す!週1回といいながら、今回は待ちきれずに、あっという間に2回目のレポートをお送りします!

 さて、前回は『求塚』に登場する「楠木家の人々」をご紹介しましたが、今回は、なにやら謎めいたこの楠木家に深く関わってくる面々をご紹介しましょう。「希望が丘ニュータウン」に隣接する古い村「龍神村」には、ニュータウンとはどうも少し雰囲気の違う世界があるようです。その龍神村の男であり、輪子・月子の姉妹と浅からぬ因縁をもっていそうな男が新堂(千葉哲也さん)。この男を、このニュータウンで起きた「いくつかの事件」を調べにきたフリーライター瀬川(今井朋彦さん)が取材しています…。取材は新堂だけにとどまらず、この希望が丘ニュータウンが誇る私立学園・宮田学園の学園長・宮田(佐戸井けん太さん)にも及んでいって…。フリーライター瀬川は何を調べにこの街にきたのか?どうやってこの街の人々に切り込んでいくのか…!?

 今日レポートしたのは、まだまだ導入部分。次回からたっぷりリポートしますね。明日からも「ネタ集め」に頑張りまーす。(稽古も頑張りますよ、もちろん!)  若月理代

 
千葉哲也(新堂役)
 
今井朋彦(瀬川役)
 
 
佐戸井けん太(宮田役)
 

『求塚』稽古場レポート Vol.3
撮影:サトウヒトミ


  みなさま、こんにちは!稽古場レポートも、はや3回目。稽古はまさに「佳境」、稽古場レポートも盛りだくさんでございます。

 前回は、このニュータウンに何かを調べにやってきた瀬川(今井朋彦さん演じる)のお話を最後にしましたね。今回は、この瀬川から。






 瀬川は何を探しにこのニュータウンに来たのか?――10年前に起きた前代未聞の猟奇的殺人事件「龍神村幼児殺害事件」の犯人・楠木輪子(吉本多香美さん)の手記を手に――。瀬川は、新堂(千葉哲也さん)をたずねます。新堂は、このあたりでは、「龍神村幼児殺害事件」の「被害者の親」として――さらには「犯人の不倫相手」として――知られていた存在でした。そう、その服役中の犯人こそが、新堂を愛した女、楠木輪子…。

 しかし、新堂のいた場所は、なんと拘置所。新堂は昨年の「正月祭り」の夜に、輪子の妹・月子(吉本多香美さん)の息子を殺したとして拘留されていたのです…。世間で「復讐劇」として知られたこの事件ですが、執拗に新堂に質問を重ねる瀬川。さらに瀬川は、迷路のようなニュータウンの自治会長・宮田(佐戸井けん太さん)を取材するも、のらりくらりとはぐらかされ、くわえて月子夫妻は瀬川に、…。事件の核心に瀬川は迫れるのか!?

 と、今日はサスペンス仕立てにしてみました!ここまで読んでお気づきの方へ――そうです。フリーライター瀬川役の今井さんは、本当に大変!5人の俳優さんを相手に1人で戦っている感じ。プロデューサーの松井さんも「大変な役ですねぇ」と思わず慰労のお言葉。にもかかわらず、今井さんは「そうですねぇ」と涼しげな表情。さっすがーと思っていたら、「でも、最近、人を問い詰める役が続いていて、やな奴だと思われてるんですよね…」とやや複雑な表情でもありました。稽古場を出ると穏やかで聞き上手の今井さんなのですが今回の舞台でも(?)相当な「やな奴」ぶりが期待できますよー。

 さて、もうひとりご紹介しましょう。今回の舞台のひとつ希望ケ丘ニュータウンの自治会長で、私立宮田学園の学園長でもある宮田孝治。宮田という男、父親健三の夢であったニュータウン作りに、血道を上げているようです。住民自治の街とはいうものの、自治会、学校とすべて宮田がリーダー。今回の『求塚』の舞台は、説明的なセットや小道具がなく、すべて俳優さんの肩にかかっているといっても過言ではないのですが、このちょっと得体の知れない(?)自治会長を演じる佐戸井けん太さんも出ずっぱり。とても緊張感の高い舞台であるのは間違いなし。ところが!この集中度の高い『求塚』の稽古場で、佐戸井さんが私にくれる稽古前のお楽しみがあるんです!どうしても皆さんにご紹介したい!それはですね、なんと佐戸井さんの尺八!(この前出演していらしたお芝居で尺八を吹く役を演じて以来、はまってしまったようです) お上手なんですよー。とっても贅沢で優雅なひととき。しかも奏でているのはポップスなんです。宇多田ヒカルとかドリカムとか!先日、佐戸井さんの尺八にあわせて『涙そうそう』歌っちゃいました!今度何かリクエストしてみようかなー。ちなみに佐戸井さんはとっても気さくな方で、夢の遊眠社時代のお話しなどを面白おかしく、バナナをくわえながら(毎日持参されている)して下さったりもします。

 あれ、気づいたら、今回のレポートには今井さんと佐戸井さんしか出てきてない!
 ごめんなさーい。次回も盛り沢山にお伝えしますので、しばしお待ちをーー!
若月理代


『求塚』稽古場レポート Vol.4
撮影:サトウヒトミ


みなさま、こんにちは!稽古はいよいよ「大詰め」です。
今日も、踊りの稽古に、(そうです、なんと今回は神楽舞があるんです)
みんなで、へろへろになりながら(?)衣裳合わせなどと本番に向けて盛りだくさん!頑張ってまーす。

お約束どおり、今回は紅一点の吉本さんから、ご紹介します。
お気づきになった方もいると思いますが、吉本さんは今回2役!(楠木輪子・月子)
色濃い(?)男性キャストに囲まれて、愛と憎とを演じ分けるこれまた大変な役どころ。

けれども、そんな役どころに体当たりで臨む吉本さん!
その姿は、なんとも凛々しく美しくて、思わず吉本さんの演技に感情移入。
稽古中にもかかわらず、涙、涙、でございます。(本当ですよ。いつもハンカチ握って稽古見てるんです)
横で、鐘下さんも「いい顔するなぁ・・・」とつぶやいておりました。
普段の吉本さんは、とっても明るい方で、稽古場には、彼女のキュートな笑い声が響いております。
面白いのが、鐘下さんのダメ出し中(ダメ出し=演出家が俳優に注意点や要望を伝えること)。
納得できると、大きい瞳をさらに見開き、「ふーーーーーーーーーん」と、ものすごーーく長いうなずき。
納得具合により、長さや、語尾の上がり方が変わります。分かります?このニュアンス伝わったかしら・・・。

そんな、吉本さんの父親役は、ダンディな品川徹さんです。
(『白い巨塔』にはまっていたので、初めてお会いしたときはドキドキでした。)
毎日、劇場まで自転車でご出勤。
稽古場では、持参のマットレスで、暇をみつけてストレッチ!体調にお気を使われているご様子。
とおってもムードのある方で、品川さんがお話しをはじめると、みんな黙って聞き入っちゃいます。
もちろん、それは、お芝居においても同じ。
なんだろう。品川さんが動かれると、空気が変わるんですよねー。
鐘下さんと2人で、「すごい・・・すごすぎる・・・」とつぶやいてます。

おまけ話。
この前、品川さんからがんばっている稽古場のみんなになんとワインの差入れを頂きました。(一人一本ですよぉ)
ホント、ダンディだわ!

では、次回もお楽しみに!

若月理代






『求塚』稽古場レポート Vol.5
撮影:サトウヒトミ

 こんにちは。暑い日が続く中、稽古もいよいよ終盤です。鐘下版『求塚』、いい感じに仕上がってきています! さて、明日から劇場入りですので、今回が稽古場からの最後のレポート。ラストの稽古場レポートは藤井びんさんと千葉哲也さんの素顔に迫りまーす。

 まずは、吉本多香美さん演じる楠木月子の夫、忠司役の藤井びんさん。びんさんは、演劇界ではまれな福島弁の俳優さんです。鐘下氏の書いたセリフが、びんさんを通してますます、「くーっ、実感!」と伝わってきます。そしてそのイントネーションも手伝ってか、びんさんは稽古場の「癒し系」(この間はお手製の梅干を差し入れてくださいました!)。食べ物、お酒、いろいろなものに造詣が深く、よーく面白い話をしてくれます。ところが忠司役は、足が悪いという設定で、かつ、緊張感の高い場面も多く(どんな?と思った方は、是非、劇場に来てください!)、日に日にやつれ、口数が減ってゆくびんさん……。劇場入りの明日は、俳優さんはお休み。ゆっくり休んで、元気になって、また楽しいうんちく話を聞かせてくださいね。

 さてさて、稽古場レポートの大取りは、これまた吉本多香美さん演じる輪子の、かつての不倫相手で現在服役中の新堂役、千葉哲也さん。くらーい影のある役が得意な千葉さんならでは謎の多い人物。演出の鐘下氏とは20年来のおつきあい(ガジラの旗揚げからご一緒です)という千葉さんは、誰よりも鐘下氏の作品を理解している稽古場のムードメーカー! 「怖い犯罪者」役のイメージも強いようですが(千葉さん、ごめん!)、実は、とってもお喋り上手の、つっこみ上手。そんな千葉さんのつっこみに、佐戸井さんは「えっそうかな、そう?」とインテリジェンスの血が納得いかないご様子。品川さんはしばし沈黙したのち、絶妙な間で「そういうこともあるよ」。藤井びんさんはうんちく話で切り返し? 吉本さんは……ニコニコとひたすら楽しそう! ただし、千葉さんをしてどうしてもつっこめないのが今井さん。「今井君は隙がないんだよー」と悔しそう。ちなみに鐘下氏まで、駄目出し中につっこまれています(鐘下氏の名誉のため付け加えると、名前の言い間違えとかね)。でも私は聞いちゃいました。稽古終わりに千葉さんが「しゃべり疲れた…」とつぶやいていたのを。ふふっ。ご苦労様です。

 こんな感じで進んできた『求塚』稽古ですが、まだ皆さんにご報告していなかったのが「演出家としての鐘下さん」の生の姿! 鐘下作品のパワーの源は、鐘下辰男のパワーにあります!(あたりまえ!?) 毎日8時間の稽古が延々と続いても、鐘下さんのパワーはとどまるところを知りません。身振り手振りを駆使したダメ出しの迫力は稽古場でもう一本のお芝居を見ているよう。説得力があるんですよ〜。聞いていると「そうよ、そうか、そうきたか。うんうん、そうよねえ!」と思わず感じ入ることしばしば。これは鐘下稽古場を体験したものじゃないと味わえない醍醐味です! 鐘下版「求塚」にはこれらがみーんな詰まっています。どうぞご期待ください!



 次回は初日レポートの予定です。さぁ、あと一息!頑張るぞー。芝居ともどもお楽しみに!


7月6日 若月理代
 

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