ワークショップ・レクチャー

『舞台芸術/史論』
世田谷パブリックシアターレクチャー2007

 全6回講座からなる本講座は、4名の専門家をお招きし、演出家、劇言語、コンテンポラリーダンス、舞踏などをキーワードに、現代日本の舞台芸術界が立脚する系譜を辿りながら、舞台芸術が社会とどのようにコミュニケーションを取ってきたのか、舞台芸術が社会において担ってきた役割は何なのかということを考えていきたいと思います。


なお、本講座は6回全てにご参加いただくことを前提にプログラムが組まれてはおりますが、日程のご都合がつかない方のために、A:演出家(9月11日、14日)、B:劇言語(9月17日、19日)、C:舞踊(9月21日、10月5日)の3つを個別に受けられるようにしております。
内容については、下記をご参照下さい。

 
 
日程 2007年
Aコース:演出家 9月11日(火)・9月14日(金) 19時~21時
Bコース:劇言語  9月17日(月・祝) 15時~17時、9月19日(水) 19時~21時
Cコース:舞踊  9月21日(金)・10月5日(金) 19時~21時

※受付は15分前より開始、お申込み後キャンセルの場合は必ずご連絡ください。
 
 
内容 Aコース:演出家
「演出家の役割―舞台芸術と社会をつなぐ」 (講師:西堂行人)
9月11日(火) ・9月14日(金) 19時~21時
 20世紀は「演出家の世紀」だといわれる。舞台を統括する創造力の権力が演出家に委譲され、演出家を頂点とする集団が編成されていったからである。この傾向は劇作家とスター俳優の優位が保障されていた商業主義の劇場以外でいっそう強まった。日本の近代以降の演劇史、とりわけ20世紀演劇にも同様の傾向が発生した。演劇が娯楽としてのみならず、現実の動向を考察する思考装置となり、人間社会の未来の実験を試みる場となった時、演出家の役割は前にもまして重要性を帯びるものとなった。今回のレクチャーでは、日本の近・現代劇を通じて、演出家の仕事を考察するとともに、ますます重要になってきた、社会と舞台芸術をつなぐ媒介者としての演出家の役割を探ってみたい。 
※『演出家の仕事―60年代・アングラ・演劇革命』(れんが書房新車)の第一部の拙稿をお読みの上、受講して下さい。

Bコース:劇言語
「〈劇言語〉のオントロジー―いま、「戯曲」はどこまで自明か?」(講師:森山直人) 9月17日(月・祝) 15時~17時、9月19日(水) 19時~21時
この講座では、日本の近現代演劇史を「〈劇言語〉の歴史」という観点から再考してみたいと思います。《劇言語》といえば、すぐに「戯曲」が思い出されます。けれども独立した文学作品としての「戯曲」がなくても成立する演劇は、歴史上数多く存在してきました(1960年代、世界的に興隆した前衛演劇は、ある意味でそうした歴史を奪還する試みであったとも言えます)。また、高度に発達した今日のテクノロジーは、総合芸術としての舞台を構成する光、音、空間などの諸要素に、ますます独自の言語的性格を与えつつあります。では、今日の社会にとってアクチュアルな《劇言語》とは一体どのようなものなのでしょうか? そして私たちに馴染み深い「戯曲」とは、いま、どこまで自明なものでありうるのでしょうか? こうした問題を、西欧近代文化の「翻訳」を通じて成立してきた日本の近代劇が、「国語」の成立 と密接に関わっていたことなどを考慮しつつ、幅広い視点から検討していきたいと思います。
※以下の文献を事前に読んでおいてください。三島由紀夫『サド公爵夫人』(新潮文庫)、松田正隆「アウトダフェ」(『第二次シアターアーツ』29号、および『舞台芸術』11号に別々のヴァージョンが掲載されています)

Cコース:舞踊
「コンテンポラリーダンスの情況」(講師:貫成人)
9月21日(金) 19時~21時
「舞踊の世紀」と言われる二十世紀。だが、イサドラ・ダンカンなどの自由舞踊、マリー・ヴィグマンなどの表現舞踊、マーサ・グレアムなどのモダンダンス、80年代フランスのヌーヴェル・ダンスなど、いずれも当時の社会や文化の状況、各国家の文化政策などと無縁に誕生し、隆盛を見たわけではなかった。その事情は、90年前後に世界各地でうまれた「コンテンポラリーダンス」についても変わらない。 その各地における誕生の背景には、90年前後における世界システムの変貌、すなわち「冷戦終結」があった。一方、社会情勢や政治とは一見、無縁に見えるコンテンポラリーダンスも、さまざまな政治性を秘めている。ピナ・バウシュやローザス、コンドルズなどといった作家、カンパニーにおけるこうした事情について概観する。

「戦後日本の身体と舞踏―社会との関わりをめぐって」 (講師:國吉和子)
10月5日(金) 19時~21時
戦後日本の現代舞踊は、20世紀はじめにヨーロッパから伝えられた近代舞踊を母体として成長し、西欧から学んだダンスの技術、作品創りの技法を熱心に取得することに全力を注いできました。しかし、1950年代末、土方巽と暗黒舞踏の登場は、舞踊を捉える視点に 大きな転換を迫るものとなりました。当時、一握りの文化人、作家達の共感を得て公演を続けた舞踏が、社会とどのような関係をもっていたのでしょうか? また、1980年代半ば以降、欧米での評価を逆輸入するように、舞踏は日本国内で改めて広く注目されるようになりました。舞踏は常に社会との関係を強く意識しながら屈折した歴史を展開してきたといってもよいでしょう。講義では、舞踏の「肉体」をめぐる思考および言説、記録j映像をとおして、舞踏が社会とどのような関わりをもってきたのかについて考えてゆきたいと思います。

※各回の内容は受講者数や進行状況によって変わる場合があります。
 
 
場所 世田谷文化生活情報センター セミナールーム(キャロットタワー5階)
 
 
講師 [プロフィール]
西堂行人(にしどう・こうじん)
演劇評論家。近畿大学教員。国際演劇評論家教会(AICT)会長。日韓演劇交流センター副会長。著書に『演劇思想の冒険』 『小劇場は死滅したか』 『ハイナー・ミュラーと世界演劇』 『ドラマティストの肖像』 『韓国演劇への旅』 『現代演劇の条件』 『劇的クロニクル』。編著に『演出家の仕事――60年代・アングラ・演劇革命』

森山直人(もりやま・なおと)
演劇批評家。京都造形芸術大学芸術学部舞台芸術学科准教授。主な論考に「過渡期としての舞台空間-小劇場演劇における昭和30年代」(『舞台芸術』連載)他。

貫成人(ぬき・しげと)
哲学、舞踊研究。日本舞踊学会常務理事。「日本ダンスフォーラム」ボード。専修大学文学部教授。『ダンス・マガジン』『舞踊研究』などに舞踊批評を執筆。「‘コンテンポラリーダンス’という概念」『上演舞踊研究』、「舞踊装置:身体性・作品性・官能性」『講座文学』(岩波書店)など。

國吉和子(くによし・かずこ)
舞踊研究・評論。早稲田大学非常勤講師。舞踊学会理事。日本洋舞史研究会事務局「舞姫の会」(土方巽研究)主宰。トヨタコレオグラフィーアワード審査員(2002~2004)。著書『夢の衣裳、記憶の壺――舞踊とモダニズム』。共著『日本洋舞史年表Ⅰ~Ⅳ』。編著に市川雅遺稿集『見ることの距離――ダンスの軌跡1962~1996』 
 
 
参加費 A、B、Cコースとも各3,000円
A~Cコース全参加は8,500円 
※参加費は、受講当日に会場にてご精算いただきます。
 
 
募集人数 20名 (先着順、定員になり次第終了)
 
 
締切り ※先着順に受付しておりますが、定員に達した場合は受付を終了しますので、予めご了承ください。
 
 
申込み方法 下記申込みフォームか、または劇場(03-5432-1526)までお申込みください。
 
 
お問合せ 世田谷パブリックシアター学芸 03-5432-1526
 
 
備考 [助成] アサヒビール芸術文化財団
 
 
受付は終了致しました。
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