概要

遠野物語・奇ッ怪 其ノ参
「奇ッ怪」 シリーズ第三弾!
超常的な世界観を真骨頂とする前川知大が、異界との共生を綴る「遠野物語」をモチーフに、
現代の“奇ッ怪”な物語を紡ぎだす。

 

この世とあの世の境目に迷い込んだ者たちが、奇ッ怪な話を語り合う。
語り、演じるうちに、語り手自身の物語が浮かび上がっていく。
「奇ッ怪 其ノ参」では「遠野物語」を語りながら、語り手たち、つまり私たちの現在を問い直します。
「遠野物語」は柳田国男が不可思議な遠野の伝説を聞き記したもの。
「願はくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」と序文にある。
昔話とも単なる怪談とも違う、孤高のテキスト。
柳田は「遠野物語」を世に出すことで、いったい何を語ろうとしたのか。
近代化が進む変化の時期に、「遠野物語」は出版された。
今「遠野物語」を語ることで、
私たちが失って久しいもの、
失いつつあるもの、
そしてどこへ向かおうとしているのか、
舞台の上で考えます。
―― 前川知大 (脚本・演出)

 

緻密な構成と筆致で、身近な生活と隣り合わせに現れる異界を描きだし、多くの演劇ファンを唸らせてきた前川知大。世田谷パブリックシアターは、前川知大脚本・演出による「奇ッ怪」シリーズを2009年より継続して上演してきました。そしてこの度、『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』(09年)、そして第19 回読売演劇大賞の大賞・最優秀演出家賞等を受賞した「現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』」(11年)に続くシリーズ第三弾、『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』を2016年10~11月に上演します。

今回の「奇ッ怪」は、民俗学者・柳田国男が遠野盆地~遠野街道にまつわる民話を集録した「遠野物語」をモチーフとします。河童や天狗といった妖怪たちから、死者、神に至るまで様々な異界のものたちと生きてきた人々の記憶の集積を、超常的な世界観を真骨頂とする前川が、日本の演劇界を賑わす魅力ある出演陣と共にどのように紡ぎだすのか、ご期待ください。

【受賞】
第24回 読売演劇大賞

大賞・最優秀スタッフ賞
堀尾幸男
『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』『逆鱗』の美術

優秀スタッフ賞
原田保
『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』『MURDER for Two』の照明

スタッフ/キャスト

【原作】 柳田国男 (「遠野物語」角川ソフィア文庫)
【脚本・演出】 前川知大

前川知大

 

【出演】
仲村トオル 瀬戸康史
山内圭哉 池谷のぶえ 安井順平
浜田信也 安藤輪子 石山蓮華
銀粉蝶

仲村トオル

瀬戸康史

 

 

 

 

 

山内圭哉

山内圭哉

池谷のぶえ

安井順平

 

 

 

 

 

浜田信也

安藤輪子

石山蓮華

 

 

 

 

 

銀粉蝶

 

【美術】 堀尾幸男
【照明】 原田保
【音響】 青木タクヘイ
【音楽】 ゲイリー芦屋
【衣裳】 伊藤早苗
【ヘアメイク】 宮内宏明
【演出助手(ドラマターグ)】 谷澤拓巳
【舞台監督】 田中直明

初日コメント

『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』 10/31(月)開幕!

脚本・演出 前川知大さん、キャストの仲村トオルさん、瀬戸康史さんにプレビュー公演を終えた心境についてコメントをいただきました。

 

前川知大
良いプレビュー初日でした。お客様が入って固まったという感じがします。とにかく劇場全体がすさまじい集中力に包まれていました。原作の「遠野物語」を知っている人には絶対に面白いでしょうし、知らない人にも届く、一演劇作品として面白い作品になったのではないでしょうか。柳田国男は自分の伝えたいことをストレートに語らなかった人。僕たちはトオルさん演じるヤナギタを通して、彼のメッセージを語っていきたいと思っています。

 

仲村トオル
いつも初日を迎える度に感じることですが、お客様に教えていただくことはとても多く、大きいものです。今作は特に「伝わっているのか」「今の自分はきちんと村人に見えているか」など、これほど教えていただかないと不安で仕方がない作品はありませんでしたが、お客様から「大丈夫」と、我々の背中を押してくださるような空気が伝わってきまして、安心しました。

 

瀬戸康史
僕が演じるササキの台詞に「話している時は最高なんだ。気持ち良いんだ」というものがあるのですが、初日を終えてまさにそういった感じでした。 舞台に出るまではすごく緊張していたのに、いざ語り始めたらノってくるんです。自分の中にササキが入り込んできたように感じました。僕は語り部としてヤナギタに語りかけると同時にお客様にも語りかけていて、ある意味お客様も出演者だと思って演じています。

序・あらすじ

■ ストーリーライン

今は昔、あるいは未来。舞台となる世界は、現実から少しずれた架空の日本。

社会の合理化を目指す「標準化政策」により、全てに「標準」が設定され、逸脱するものは違法とされた。
物事は真と偽、事実と迷信に明確に分けられ、その間の曖昧な領域を排除した。

管理の整った首都圏は標準に染まり、地方も固有の文化を失うことで衰退しつつある。
作家のヤナギタは、東北弁で書かれた散文集を自費出版したことで、任意同行を求められた。
方言を記述したうえ、内容も迷信と判断され、警察署の一室で事情を聞かれている。
迷信を科学的に解明することで著名な学者、イノウエが召喚され聴取に加わった。
ヤナギタは、書物は標準語と併記のうえ、内容も事実だと主張する。
それはある東北の青年から聞いたノンフィクションであり、流行りの怪談とは違うと話す。
しかしイノウエは、書かれたエピソードは科学的な解明が可能なものに過ぎないが、奇ッ怪なように
書くことで妄言を流布し、迷信を助長するものであると批判する。
散文集のエピソードについて二人が議論をする内に、次第にヤナギタが著作に込めた思いや、イノウエが怪を暴き続ける個人的な理由が浮き彫りになっていく。
そんな中、ヤナギタに物語を語った東北の青年、ササキが警察署に現れる。
イノウエはササキに真意を求める。
しかしヤナギタはササキが現れたことに動揺している。彼は今ここに居てはいけないのだ…。
散文集(「遠野物語」)のエピソードを紹介しながら、ヤナギタとイノウエは真と偽、事実と迷信、この世とあの世といったものの、間(あわい)の世界へ迷い込んでいく。

■序  前川知大 (2016.8.25)

『奇ッ怪』も三作目となる。この連作は、日本の古典を今の感覚で読み解くという企画だ。
そして現代の怪談というようなものを好んで書いてきた私は、まずは「怪」という題材を選び、
『奇ッ怪』としてスタートした。
ここでひとつ、この連作の成り立ちを振り返ってみたい。
そうすることで、今回なぜ『遠野物語』なのか、ということが見えてくるはずだ。

一作目は小泉八雲の怪談を題材にした。
八雲の怪談は再話と呼ばれる。再話とは、語り継がれてきた
昔話や伝説を現代の言葉で書き記した文学のことだ。
語りから文字になったものを、演劇によって再び語り、つまり音に戻す試みだった。
舞台上、登場人物は八雲の怪談を語りはじめ、それが目の前で起きる出来事へと
スライドしていくように展開した。
そして物語=過去を語るうちに、語り手の現在が浮かび上がるという構成だ。
メインの語り手だった男が死者であったことが分かり、物語は閉じる。

この構成は能の夢幻能といわれる形式にとてもよく似ている。
夢幻能とは、まず僧が旅先で人に出会い、その土地の悲劇的な縁起を聞く。
しかし実はその語り手こそが悲劇の当事者であり亡霊であったことを知る。
亡霊は僧に話を聞いてもらうことで成仏していく。この夢幻能の形式に意識的になったことで、
『奇ッ怪』のコンセプトは実は「怪」よりも「語り」の方に比重が置かれるようになった。
なぜ語らなくてはならないのか。それは言い残したことがあるからだ。
語り手は死者。能の根底には「鎮魂」という目的がある。
一作目の客観的理解を経て、二作目『奇ッ怪 其ノ弐』は能と狂言そのものを題材にした。

一作目が「語ること」に主眼を置いたなら、二作目は「聞くこと」に主眼を置いた。
鎮魂とは、死者の言葉に真摯に耳を傾けることだからだ。
では、死者とは誰か。
能の演目から題材を取らず、日常の中で言い残された言葉や聞いてもらえなかった言葉を
拾い上げることにした。
行き場のない、受け取ってもらえなかった言葉たちが、小さな死となり澱のように溜まっていく。
それがゆっくりと人の心を殺す。そのような物語を書いていた。

公演は2011年の夏。執筆途中に、東日本大震災が起きた。
数えきれない死者と、膨大な言い残された言葉、宛先を失った言葉が生まれた。
演劇は今を映す。鎮魂をテーマをした作品で、この未曾有の出来事を避けて通ることは出来なかった。
ただ荷が重く、筆が止まった。この時期に、死者の言葉を代弁することなど私にはできなった。
ある日断ち切るように失われた日常を淡々と描くことで、物語は幕を閉じた。
奇ッ怪なエピソードを語る演目だったはずが、日常で終わった。

その時は日常こそが非日常だったからだ。

今日と同じように明日がある、と思い込むのは実は奇ッ怪なことだと誰もが思い出した。
あまりに今(当時)に寄り添いすぎた『奇ッ怪 其ノ弐』を、
私はしばらく読み返すことが出来なかった。
正直に言うと、三作目に手を付ける最近まで、四年以上も開くことが出来なかった。
あれほど混乱の中で書いた本は無く、何を書いたかほとんど思い出せず、怖くて開けなかったのだ。

そして三作目。なぜ『遠野物語』なのか。それはこれが鎮魂の書であるからだ。
岩手県遠野に語り継がれてきた伝承を聞き、書き記したもの。
柳田國男はそこに書かれたことは「事実」であるという。
『遠野物語』はいわゆる怪談ではない。
そこに書かれたことはそのまま現象として、当時の人の眼前に現れたはずだ。
奇ッ怪に思われる出来事は、かつて日常に組み込まれていた。
近代化と合理主義によって日常が変わってしまったから、奇ッ怪に見えるのだ。
『奇ッ怪 其ノ弐』の頃、日常が奇ッ怪になってしまったように。

『遠野物語』は近代化によって失ったものへの鎮魂であると同時に、現代人が日常と思っているものを揺さぶろうとする。
揺さぶっているものはなにか。
それは失ったもの、私たちが葬り去ってきたもの、つまり死者だ。
私たちは死者の上に立っている。どこへ行こうにも逃げることはできない。

おそらく物語とは、死者との対話から始まっている。
なぜ物語が必要なのか。
それは私たちの今を見つめるためだ。
日本人はどこから来てどこへ行くのか、と柳田國男は考えた。
もちろん地理的なことだけではない。
社会を前進させる為の取捨選択が、常に正しかったわけではないことは歴史が証明している。
捨ててしまったものが何だったのか、よく見てみることは必要だろう。

一作目では「語ること」を、二作目では「聞くこと」を主眼に置いたと書いた。
三作目ではそもそも「なぜ物語が生まれたのか」ということを主眼に置いて『遠野物語』を語ってみたい。
柳田國男は『遠野物語』を世に出すことで、何を語ろうとしたのか。
明治四十三年(1910)という近代化が進む変化の時期に『遠野物語』は出版された。
二十一世紀になり、社会の変化はますますスピードを上げている。

今『遠野物語』を語ることで、私たちが失って久しいもの、失いつつあるもの、そしてどこへ向かおうとしているのか、考えてみたい。

写真:ヤマセに覆われた遠野盆地。太平洋側からの冷湿な風で発生する濃霧。撮影 前川知大

DVD予約販売

本公演のDVDが、2/25(土)発売となります。発送は2/27(月)より開始予定です。
2/24(金)までこちらよりご予約を承ります。ご予約の方には、送料をサービスさせていただきます。

メディア情報

12/27(火)STAGE SQUARE Vol.24 仲村トオルインタビュー
12/12(月)J Movie Magazine Vol.18 公演レポート
11/15(火)東京新聞(夕刊) 劇評「精彩放つ前川演出」
11/13(日)産経新聞「鑑賞眼」 劇評
11/11(金)日本経済新聞(夕刊) 劇評「現実と民話 巧みな住還」
11/9(水)えんぶ2016年12月号 前川知大インタビュー
11/9(水)TVガイド 瀬戸康史インタビュー・公演レポート
11/5(土)エンタステージ 公演レポート
11/2 (水)ステージナタリー 公演レポート
11/1(火)エクラ12月号 仲村トオル インタビュー
11/1(火)サンデー毎日(11/13号)仲村トオル 表紙・インタビュー
10/31(月)週刊エコノミスト 公演情報
10/28(金)23:00~ TBS「A-Studio」瀬戸康史 ゲスト出演
10/27(木) BEST STAGE 12月号 前川知大×仲村トオル インタビュー
10/ 26(水)anan (No.2026号) 瀬戸康史 インタビュー
10/24(月)毎日新聞(夕刊) 前川知大インタビュー
10/15(土)BRUTUS2016年11月1日号 前川知大×仲村トオル対談
10/14(金)J Movie Magazine vol.16 仲村トオルインタビュー
10/8(土)8:30~9:55 フジテレビ系列(関西テレビ)「にじいろジーン」瀬戸康史 ゲスト出演
10/7(金)CREA11月号 瀬戸康史インタビュー
10/7(金)CREA11月号 公演紹介
10/7(金)大人のおしゃれ手帖11月号 瀬戸康史インタビュー
10/6(木)昴(すばる)11月号 前川知大インタビュー
10/6(木)ダ・ヴィンチ11月号 前川知大×仲村トオル対談
10/3(月)ぴあ+〈plus〉 前川知大インタビュー
10/1(土)シアターガイド11月号 前川知大/仲村トオル/瀬戸康史インタビュー
9/29(木)Deview 瀬戸康史インタビュー
9/28(水)装苑 11月号 瀬戸康史インタビュー
9/23(金) SODA 11月号 瀬戸康史インタビュー
9/20(火)リンネル11月号 公演情報
9/20(火) 週刊朝日 瀬戸康史インタビュー
9/17(土)livedoor NEWS 瀬戸康史インタビュー
9/17(土) エンタステージ 山内圭哉インタビュー
9/16(金)8:15~9:54 NHK「あさイチ」プレミアムトーク 仲村トオル ゲスト出演 
9/12(月)HERS 10月号 瀬戸康史インタビュー
9/12(月)BUTAKOME 山内圭哉インタビュー
9/3(土)日経エンタテイメント!10月号 前川知大 インタビュー
9/1(木) B-plus  仲村トオル インタビュー
9/1(木)婦人画報 10月号 仲村トオル インタビュー
8/27(土)BEST STAGE 10月号 瀬戸康インタビュー
8/27(土)STAGE SQUARE vol.22 前川知大/仲村トオル/瀬戸康史インタビュー
8/23(水)婦人公論 No.1455 公演情報
8/19(金) awesome! vol.17 瀬戸康史インタビュー
7/27(水) ステージナビ vol.09 仲村トオル インタビュー

追加公演

追加公演日程:
11/19(土)18:00開演

会場:世田谷パブリックシアター
料金:一般 S席7,500円 A席5,500円 高校生以下・U24は一般料金の半額
   友の会会員割引 S席7,000円 せたがやアーツカード会員割引 S席7,300円

発売開始:10/2(日) 12:00~

チケット取扱い:

世田谷パブリックシアターチケットセンター
03-5432-1515(10:00~19:00 年末年始を除く)

世田谷パブリックシアターオンラインチケット
https://setagaya-pt.jp/ (PC)
https://setagaya-pt.jp/m/ (携帯)

ほか各プレイガイドにて発売

当日券情報

1.電話予約
当日朝10:00~開演の2時間前まで世田谷パブリックシアターチケットセンター(電話03-5432-1515 )にて承ります。

2.窓口販売
開演の1時間前より、劇場入口の当日券受付にて販売します。

 

※前売券は残席がある限り、前日までご予約を承ります。
・世田谷パブリックシアターチケットセンター
公演日前日19:00まで、店頭&電話03-5432-1515にて受付
・世田谷パブリックシアターオンラインチケット
公演日前日23:30まで受付

 

詳細は各公演日当日の10:00以降に、世田谷パブリックシアターチケットセンター(03-5432-1515)までお問い合わせください。

ツアー情報

国内ツアー 2016年11~12月

★新潟公演
会場:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
日時:11/23(水・祝)13:00
お問合せ:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521(11:00~19:00)

★兵庫公演
会場:兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
日時:11/26(土)13:00/18:00 、27(日)13:00
お問合せ:芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255

★岩手公演
会場:岩手県民会館 大ホール
日時:11/30(水)18:30
お問合せ:019-624-1173

★仙台公演
会場:イズミティ21 小ホール
日時:12/3(土)18:00、12/4(日)13:00 
お問合せ:仙台市市民文化事業団 022-727-1875

動画

舞台写真

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公演日程表

★=プレビュー公演
◎=終演後ポストトークあり(11/7=前川知大×野村萬斎 11/9=前川知大×仲村トオル×瀬戸康史 ほか ※開催回のチケットをお持ちの方がご参加いただけます)
△=収録のため客席にカメラが入ります
■=視覚障害者のための舞台説明会あり(劇場まで要申込み・無料、本公演のチケットをお持ちの方対象)詳細はこちら
□=追加公演