公演情報->ハムレットの悲劇 |
原作:W.シェイクスピア
ピーター・ブルック脚色・演出 ハムレットの悲劇 The Tragedy of Hamlet 2001年6月23日(土)〜7月3日(火) |
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エイドリアン・レスター(ハムレット)@P.VICTOR |
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【公演概要】
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2000年11月21日、ピーター・ブルックの活動の拠点、パリのブッフ・デュ・ノール劇場で幕を開けてから、ワールド・ツアー中も各地で大絶賛を浴びている『ハムレットの悲劇』が、ついに日本で上演されます。 シェイクスピアの作品の中でも、あまりにも有名な『ハムレット』。今も世界中のどこかで必ず上演されているこの作品を、演劇界の巨匠ピーター・ブルックがシンプルに脚色、演出。20世紀から21世紀にまたがる、まさにこの時代ならではの公演とも言えるでしょう。 |
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シェイクスピアの作品の中でも上演時間が長いと言われる『ハムレット』。まともに上演すれば、5時間はかかるとも。その大作が、ピーター・ブルックの手によって、原作が大幅にカットされ、更に大胆な脚色が加えられて、2時間20分というスピーディな舞台になりました。しかしそれは、単なる時間の短縮を意味するものではありません。余分なものを削ぎ落とし、その本質を際立たせるための試み。つまり、歴史を越えて上演され続ける『ハムレット』のもつ普遍性を、現代という社会においてより明確な形で浮き彫りにする、むしろ、作品のエッセンスを凝縮した結果であると言えるのです。 |
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「……全てがシンプルで明快である。しかも、これほどまでにこの世界的文学の真髄を解き明かしてくれた舞台がかつてあっただろうか?……」 (ル・コティディアン・デ・メドゥサン 2000年12月6日) |
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例えば、クローディアスと亡霊、ポロニアスと墓掘人、と一人の俳優が二役、三役を兼ねて演じるため、出演者はわずか8人。舞台上にあるものは、赤い絨毯の上に置かれた、いくつかのスツール、しゃれこうべ、クッションのみ。出演者はシンプルな衣裳をまとって登場。そして、シェイクスピア戯曲の真髄ともいえる言葉の詩的音楽性を重視した、英語による上演。研ぎ澄まされた空間を支え、作品に重要な力を与える土取利行の音楽。 こうした演出の意図は、すべて以下のピーター・ブルックの言葉に集約されています。 |
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「わたしたちは国籍の違う役者たちによる新しい脚色のハムレットを、シェイクスピアの言葉である英語で上演することにしました。英語でなくてはならないのは、この作品の命そのものが、この言葉の音楽性にこめられていると思うからです。 新しくあるための新しさを求めるなど論外です。この作品に隠れる神話、基礎構造こそ、わたしたちはともに探ろうとしているものです」―ピーター・ブルック/ブッフ・デュ・ノール劇場(パリ)初演プログラム序文より |
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「デンマークの王子を演じたエイドリアン・レスターは圧倒的な魅力で観衆を魅了した」(ル・コティディアン・デ・メドゥサン) 「本質まで浄化しきったハムレット。迷いを、狂気を装う姿を、やさしいオフィーリアを失い心の亀裂を表現するとき、エイドリアン・レスターは神秘的かつ肉体的である」(レ・ゼコー) |
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土取利行は、世界的に有名なパーカッショニストとして誰もが認める存在ですが、ピーター・ブルックカンパニーに音楽監督として招かれ、『ユビュ王』『鳥の会議』『マハーバーラタ』『テンペスト』に参加して大きな反響と共に高い評価を得ています。今回もまた全編を通して作品に力を与える重要な存在となっています。 『ハムレットの悲劇』誕生の舞台裏 実は『ハムレットの悲劇』が生まれる前に、ピーター・ブルックは『キエラ』という作品を上演しています(1995年)。亡霊に向かって言う「誰だ」という台詞がタイトルのこの作品を創る過程で、ブルックが『ハムレット』を短くすることを考えたという、『ハムレットの悲劇』の基本といってもよい作品。このブルックの2つの『ハムレット』に共通するのは、フォーティンブラスを登場させていないこと。このことについて、ブルックは次のように述べています。
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「……エイドリアンが演じるハムレットは健全で現代的な若者だから、当然生気にあふれている。それでも感じやすい若者として、ごく自然に生と死の謎を理解しようとしている。『to be or not to be』の意味は『生きる価値のある生とはどんなものか?』ということになる。……中略……それは、どうしてこのまま生き続けるのか。今なら死ぬと言ってもいいんじゃないか、という思いだった。……中略……つまり、自らの命を絶つと決断するよりも、人生のあらゆる苦難に立ち向かって闘う方がさらに勇気がいると思う。ハムレットは、それもいいかもしれないと考えるんだ」(佐藤友紀インタビューより) 現代版『ハムレット』の誕生には、こうしたブルックの意図が随所に生かされているのです。 世界中で話題沸騰、大きな反響を呼び続けている『ハムレットの悲劇』。この作品は、まさに、国を越え、文化を越えて世界的な演劇を創り続けてきたピーター・ブルックの集大成とも言える、今年必見の舞台です。 |
プロフィール |
ピーター・ブルック Peter BROOK 脚色・演出 1925年ロンドン生まれ。オックスフォード大学在学中より演劇を演出。46年ストラットフォード・アポン・エイヴォンのシェイクスピア記念劇場劇団(現RSC)で『恋の骨折り損』を演出、若い内から才能を発揮し、演劇の演出だけではなく、オペラ・ミュージカルの演出、映画監督と多彩な仕事を現在までしつづけている、文字通り20世紀を代表する演出家である。1971年パリに拠点を移し、国際演劇実験センターICTRを設立。 1974年国際演劇創造センターCICTと改称し、ブッフ・ドゥ・ノール劇場を開設。『鳥の会議』『桜の園』『テンペスト』など常に話題作を発表し現在に至っている。 日本では1973年の伝説的初来日公演『真夏の夜の夢』以来『マハーバーラタ』『カルメンの悲劇』『テンペスト』などの公演を行い、日本の演劇界に与えた影響は計りしれない。世田谷パブリックシアターでは『しあわせな日々』『ザ・マン・フー』が上演された。映画作品には『モデラート・カンタービレ』『蝿の王』『すばらしき人々との出会い』など。主な著書に「何もない空間」「秘密は何もない」「ピーター・ブルック回想録」など。 |
マリー=エレーヌ・エスティエンヌ Marie-Helene ESTIENNE 演出協力 1974年ピーター・ブルックの『アテネのタイモン』のキャスティングをしたことから1977年の『ユビュ王』製作を機会にCICTに参加。以来同センターでの全ての製作に演出協力・立案者として加わり、ピーター・ブルックの右腕として活躍。 |
土取利行 Toshiyuki TUCHITORI 音楽 1950年香川県生まれ。幼少の頃より日本の太鼓を演奏し、1970年代は前衛ジャズの天才ドラマーとして、近藤等則、坂本龍一、阿部薫らと音楽活動を展開。また、伝説的ドラマーであるミルフォード・グレイブズと出会い、音楽の根源的な探求に導かれる。グレイブズ、スティブ・レイシーらとフリーインプロヴィゼイションを行い国際的に活躍。ピーター・ブルックカンパニーに音楽監督として招かれ、『ユビュ王』『鳥の会議』『マハーバラタ』『テンペスト』に参加。特に『マハーバーラタ』の音楽は大きな反響を呼び高い評価を得た。 1987年より桃山晴衣とともに岐阜県郡上八幡に「立光学舎」を設立。縄文鼓の復元、演奏に取組み世界の注目を集めている。著書に「螺旋の腕」(筑摩書房)「縄文の音」(青土社)など。 |
キャスト・プロフィール |
エイドリアン・レスター Adrian LESTER ハムレット 1968年ジャマイカ出身の両親の元にバーミンガムで生まれ育つ。ロンドン演劇王立アカデミーで学ぶ。 『お気に召すまま』(1991年)のロザリンド役で絶賛され、『カンパニー』の演技でローレンス・オリヴィエ賞ミュージカル部門主演男優賞を受賞(1996年)。若い内からイギリスで最も優れた俳優の一人として注目されている。また舞台だけではなく映像の世界でも活躍し、ジョン・トラボルタ主演の『ベスト・カップル』、ケネス・ブラナー監督『恋の骨折り損』、『MAYBE BABY』など話題作に多数出演している。今回のハムレット役で、レスターは21世紀を代表する俳優の一人であることを証明した。 |
ナターシャ・パリー Natasha PARRY ガートルード ロンドン生まれ。12歳でデビューし、初舞台。その後映画・テレビにと活躍。ジョン・ギールグッド、アレック・ギネス、オーソン・ウェルズといった俳優、監督と共に仕事をし、英国を代表する女優の一人である。ピータ―・ブルック演出作品『鳥の会議』『チンチン』(マルチェロ・マストロヤンニ競演)『桜の園』『しあわせな日々』などに出演し、高い評価を得る傍ら、『Les 5No』(近代能楽集)(モーリス・ベジャール演出)映画『ロミオとジュリエット』(ゼッフィレリ監督)など出演多数。 |
ブルース・マイヤース Bruce MYERS ポロニアス・墓堀人 イギリス生まれ。演劇アート・ロワイヤル・アカデミーにて学習後、リヴァプール・エヴリーマン劇団で3年間働く。1967-70年RSCに所属。ピーター・ブルック国際演劇創造センター/CICT初期からのメンバーとして活躍。『ユビュ王』『鳥の会議』『マハーバラタ』『テンペスト』等ほとんどの作品に出演している。 |
シャンタラ・シヴァリンガッパ Shantala SHIVALINGAPPA オフィーリア ダンサー・女優。1976年生まれ。インド国籍。1989年モーリス・ベジャール振り付け『1789年、、、、と我々』 にソリストとして出演し注目を集める。その後、ブルック演出『テンペスト』に出演。ピナ・バウシュ・ウッパタール舞踏団に客演するなど、国際的に活躍している。 |
ジェフリー・キッスーン Jeffery KISSOON クローディアス・亡霊 ピーター・コ―演出の『マクベス』でデビュー。ピーター・ブルック『マハバーラタ』の海外公演に参加。現在、英国だけではなく、広くヨーロッパで活躍している俳優である。 |
スコット・ハンディ Scott HANDY ホレーシオ ケンブリッジ大学卒業後、スピーチ&ドラマセンターで学ぶ。シェイクスピア作品の舞台に多数出演。 今回の淡々とほのあたたかいホレーシオは、その対局でハムレットという人間像を見事に浮き彫りにし、高い評価を得た。 |
アシル・ライス Asil RAIS ローゼンクランツ・役者1 インドのボンベイに生まれる。インド伝統劇(カタカリ)を学び、テアトル・ドゥ・ソレイユでアリアーヌ・ムヌーシュキン等に師事し、以後フランスを中心に舞台で活躍している。また映画にも幅広く出演するほか、詩集・童話の著作もある。主な舞台に「アガメムノン」「インディアードまたはインド、その夢」(ムヌーシュキン演出)など。 |
ローハン・シヴァ Rohan SIVA ギルデンシュターン・レアティーズ・役者2 映画『ファイナルカーテン』ではスタンレー役でレスターと共演。今回はいずれも一癖のある役柄三役をこなす、今後が期待されている若手俳優。 |
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