『ワークショップの手法』
SPT ワークショップラボ
ワークショップや住民参画の作品創造を実践していく上で、指針となっていくような手法や考え方を、各回ごと焦点をあてていきます。今回は「集団創造」「オーラルヒストリー」「メディア」の3つをキーワードに、ワークショップの場の構造に眼を向けることを目指します。
日程 |
2011年 Vol.1 集団創造について考える ―ラテンアメリカの演劇実践を参照にして 11月2日(水)19時~21時 講師:成沢富雄(演劇デザインギルド) Vol.2 オーラル・ヒストリーの効能について考える ―イギリスの経験を中心に 11月10日(木)19時~21時 講師:市橋秀夫(埼玉大学教授) Vol.3 メディアについて考える ―メディア論的ワークショップの実践から 12月2日(金)19時~21時 講師:長谷川一(明治学院大学准教授) |
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内容 |
Vol 1. 「集団創造」について考える ―ラテンアメリカの演劇実践を参照にして 一般に作品は、「個人」の中の意識と無意識の作用により、創りだされるものだと思う。それでは、「集団」が「集団」で作品創造を行うというのは、どういうことなのだろうか? 「集団創造」では、近代的な自立した個人が、1人では到達し得ないような「物語」の多面性を「集団」として再発見するものだと思う。今日の様々な事態は、集団が異なる観点を内包する「文化」を必要としているとも考えられる。たぶん、「集団創造」のプロセスは、人々が社会において「群れ」から「認識する公衆」へ近づくことを目論む。そのプロセスは個人の中では無意識に行っていることを、意識化して取り出さねばならない。作業全体の進行を司る段取りについての知恵、作業の中で起きていることを分析する言葉などが必要とされるだろう。 本講座では、「集団創造」を実践していく際に、考えていくべきポイントを、ラテンアメリカでの演劇実践より紹介しつつ、「集団創造」の現代社会における意義を改めて考えていきたい。 Vol 2.オーラル・ヒストリーの効能について考える ―イギリスの経験を中心に 「聞き書き」をもとにして歴史を書くという手法は新しいものではありません。西欧歴史学の祖として知られるヘロドトスの『歴史』からして、各地での聞き取り調査にもとづいたものでした。歴史学や民俗学などの学問分野だけでなく、小説や戯曲などの創作作品もまた聞き書き取材にもとづいたものが少なくありません。本講座では、この「聞き書き」(オーラル・ヒストリー)と呼ばれる手法が持つさまざまな「効用」について考えてみたいと思っています。 イギリスでは、無名の人びとの歴史を記録する運動として、また移民や女性など社会的弱者とされていた人びとの経験を表現化する手法として、1970年代からオーラル・ヒストリーが注目を浴びるようになりました。こうしたイギリスの事例をふまえながら、地域の歴史や記憶を掘り起こして記録することの今日的な意義を探ってみようと思います。また、聞き書きの活動を基軸にして活発に展開されている多様なコミュニティ文化活動について、その背景も含めて紹介・検討します。 Vol 3. メディアについて考える ―メディア論的ワークショップの実践から 大学で実践している「デジタル・ストーリーテリング」というメディア論的なワークショップでは、各自が2分ほどの映像作品をつくります。テーマは「わたし」について。自分のことは自分がいちばんよくわかっている。学生たちは最初そう言います。ところが、テーマを探し始めると、そうした考えが揺らいでいきます。「わたし」とは誰なのか。自分でもよくわからなくなるのです。そこから「考えること」が始まります。 「わたし」とは、強いていえば、自己にかんするイメージの集まりであるといえるかもしれません。それらは、さまざまなメディアに媒介されてつくりあげられたものです。では、メディアとは何なのでしょうか。それは、たんにテレビやケータイなどといった情報のやりとりを仲立ちする技術や装置のことだけをいうのではありません。ものごとを認識したり、理解したり、実際にやってみたりするときの枠組みを規定するものでもあるのです。 「わたし」について作品をつくるというこのワークショップをとおして、学生たちが自分自身と向きあい、読み解き、自己のイメージをあらためて描き直します。それは、学生たちが、自分がどんな枠組みにとらわれているかに気づき、それを把持しなおす過程だということができるでしょう。 このレクチャーでは、こうしたメディア論的なワークショップの実践例についてご紹介します。それをもとに、メディアという観点から、ワークショップという場や空間について、一緒に考えていくことができれば幸いです。 こちらのページをご参考に: |
場所 | 世田谷文化生活情報センター セミナールーム(三軒茶屋駅前キャロットタワー5階) |
講師 |
《プロフィール》 成沢富雄(なりさわとみお) 1949年横浜生まれ。1972年演劇センター68/71(のちの劇団黒テント)に参加。79年フィリピン教育演劇協会(PETA)との交流プログラムに参加し、それ以降、地域住民・市民との演劇を通じた創作・交流プログラムを様々な形で継続している。現在、日本大学芸術学部講師・埼玉県立芸術総合高校講師。所沢市中心市街地活性化拠点施設野老澤町造商店・理事。 市橋秀夫(いちはしひでお) 1962年生まれ。イギリス近現代社会史を学び、現在はイギリスにおける同性愛犯罪法改革の歴史や戦後の社会規範の変容問題を調査研究中。ほかに、戦後日本の反戦運動の聞き書き調査や、フィリピンの零細バナナ農民の生活の聞き取り調査にも取り組む。埼玉大学・教員。 長谷川一(はせがわはじめ) 1966年名古屋生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得満期退学。東京大学大学院情報学環助手を経て、現在、明治学院大学文学部芸術学科准教授。専門はメディア論、メディア思想、文化社会学。著書『アトラクションの日常──踊る機械と身体』(河出書房新社)、『出版と知のメディア論』(みすず書房)、『メディアリテラシー・ワークショップ』(共著、東京大学出版会)ほか。 |
参加費 |
3,000円(全3回) ※受講初日に会場にてご精算いただきます。 ※ポイントカード対象レクチャーです。ポイントカードとは世田谷パブリックシアターのレクチャーを5 回受講頂くと、1 回無料で受講頂けるお得なカードです。 |
募集人数 |
20名程度 ※先着順に受付いたします。定員に達し次第、受付を終了いたしますので、あらかじめご了承ください。 |
申込み方法 | 以下申込みフォームか、または劇場(03-5432-1526)までお申込みください。 |
お問合せ | 世田谷パブリックシアター学芸 03-5432-1526 |
備考 | [協賛] アサヒビール株式会社/東レ株式会社 |
受付は終了致しました。
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