『劇場における公共性』
パブリックシアターのためのアーツマネジメント講座2009
日本における公共劇場が、「公共」の「劇場」として機能し、日本の社会の中で成立していくために、あらためて向き合わなければならない「公共」という概念と演劇/劇場空間との関係性について考えます。ドイツやフランス、アメリカの公共劇場を参照項としながら、日本の公共劇場のあり方を検討していきます。
※なお、本講座は、世田谷パブリックシアターレクチャー2007『公共圏としての劇場―劇場空間の可能性』、2008『劇場における公共性―劇場空間の可能性』と内容が重複する部分がございます。ご了承ください。
日程 |
2009年 (1) 8月5日(水)19時~21時「公共性と行為/批評の空間」 講師:齋藤純一(早稲田大学教授) (2) 8月18日(火)19時~21時「アメリカ・リージョナルシアターにおける公共性の発見―日本における地域演劇政策の発展のために2」 講師:青野智子(諏訪東京理科大学講師) (3) 8月19日(水)・21日(金)19時~21時 30分「公共劇場の根にあるもの」 講師:佐伯隆幸(演劇評論家) (4) 8月20日(木)19時~21時「〈演劇王国〉ドイツの公共劇場制度―その歴史と現在」 講師:谷川道子(東京外国語大学教授) (5) 9月2日(水)19時~21時「劇場的思考の現在―視線と空間のアルケオロジー 」 講師:八角聡仁(批評家) |
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内容 |
(1) 「公共性と行為/批評の空間」(講師:齋藤純一) 公共性を、行為や言葉における現われの空間、その現われに対する観察者の批評の空間としてとらえ、その意味について検討する。公共性を何らかの「共通性」として理解するとらえ方が一般的であるが、それを、H. アーレントの議論に沿って、「差異」(複数性)を条件とする、相異なるものたちの出会い/交渉の空間としてとらえ返してみたい。 (2) 「アメリカ・リージョナルシアターにおける公共性の発見―日本における地域演劇政策の発展のために2」(講師:青野智子) 指定管理者制度導入後の我が国の公立文化施設・ホールにおいては、文化振興の明確な理念モデルが不在のまま、質の高い「芸術」性と採算性の高い「娯楽」性を同時に実現せよという一般的には不可能な目標を、行政や一般市民から突き付けられているように思われる。他方、戦後のアメリカ合衆国においては、「芸術」でも「娯楽」でもなく「公共」的価値に依拠することによって、リージョナルシアターが、独自の公共劇場モデルを地域において構築してきた。本報告では、前回に引き続き、アメリカのリージョナルシアターが、地域のなかで公共性を発見していった歴史過程を明らかにした上で、今回は更に、我が国の公立文化施設・ホールとの比較を試み、公立文化施設・ホールの今後を考えるにあたっての有効な視角を与えたい。 (3) 「公共劇場の根にあるもの」(講師:佐伯隆幸) 「公共劇場」と呼ばれるものがこの国でスタートして約十年が経た。その間、さまざまに厖大な試行はあったものの、「パブリックな表現に関わる/による新たな関係の場の構築」という演劇の「かたち」はいぜん不鮮明であり、その将来的方向も創造者・観客相互に必ずしも共有的な土台上でみいだされているわけではない。こういう現在時を踏まえ、いまなにが考えられるか。どのような布置図を「公共の演劇」の基層や周辺にみさだめるべきなのか。ヨーロッパにおける民衆演劇のあらましを引きつつ、もう一度更地から組み立て、日本の現代演劇の様相を捉えてみたい。 (4) 「〈演劇王国〉ドイツの公共劇場制度―その歴史と現在」(講師:谷川道子) 2005年の「日本におけるドイツ年」を契機にドイツから今が旬の舞台がたくさん来日し、「ドイツ現代戯曲選30」なるシリーズも刊行されて、ドイツ演劇の独特な相貌に気づかれた方も多いかと思います。それを支えているのがドイツの公共劇場制度であり、またそれを生み出したドイツ独特の歴史でもあります。その独自性を浮かび上がらせられればと思っています。 (5) 「劇場的思考の現在―視線と空間のアルケオロジー 」(講師:八角聡仁) 舞台芸術の公共性をめぐる今日的な問いを、ソフトウェアとしての作品とハードウェアとしての劇場の関係から歴史的に捉えなおし、劇場の内側(舞台/客席)と外側(社会)における視線と空間の構造を読み解いていきます。かつて「世界」を表象する装置であった劇場が、「複製技術の時代」にどんな社会的機能を持ちうるのか。映像資料等を用いて古今東西の事例を参照しながら、なるべく身近な問題を通して考えます。 |
場所 | 世田谷文化生活情報センター セミナールーム(キャロットタワー5階) |
講師 |
《プロフィール》 ●齋藤 純一(さいとう じゅんいち) 1958年生まれ。早稲田大学政治経済学術院教授。 政治理論・政治思想史専攻。 著書に『公共性』、『自由』、『政治と複数性──民主的な公共性にむけて』など。 ●青野 智子(あおの ともこ) 諏訪東京理科大学講師。アメリカ演劇・文化政策。全米各地のリージョナルシアターにおいて調査をおこない、日米演劇の社会的・文化的基盤についての比較研究をすすめている。 ●佐伯 隆幸(さえき りゅうこう) 演劇評論家、学習院大学教授。専門はフランス演劇のなかでも近代以降のフランス演劇史。批評家としては、アングラ期以来の日本の現代演劇の動向を追う。 ●谷川 道子(たにがわ みちこ) 東京外国語大学教授。専門はドイツ演劇、なかでもブレヒトやハイナー・ミュラー、ピナ・バウシュを中心としたドイツ語圏現代演劇・表象文化論。また、その日本の現代演劇への影響関係にも関心を持つ。 ●八角 聡仁(やすみ あきひと) 1963年生まれ。批評家。近畿大学文芸学部教授。京都造形芸術大学舞台芸術研究センター主任研究員。演劇、ダンス、映画、写真、文学等に関する論考多数。編著に『現代写真のリアリティ』(角川学芸出版)他。 |
参加費 |
9000円(全6回) (1)(2)(4)(5)各回1,500円 (3)3,000円[全2回分] ※受講当日に会場にてご精算いただきます。 |
募集人数 | 30名(先着順、定員になり次第終了) |
締切り | 先着順に受付しておりますが、定員に達した場合は受付を終了しますので、予めご了承ください。 |
申込み方法 | 以下申込みフォームか、または劇場(03-5432-1526)までお申し込みください。 |
お問合せ | 世田谷パブリックシアター 学芸 03-5432-1526 |
備考 |
[助成]アサヒビール芸術文化財団 平成21年度文化庁アートマネジメント重点支援事業 |
受付は終了致しました。
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