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『往転』 青木豪×桑原裕子
2011-10-25
脚本に76年生まれの桑原裕子、演出に67年生まれの青木豪。意欲的なキャスティングでも注目されている『往転』は、共に劇作家であり演出家であるふたりが初めて手を組む作品だ。05年、青木が作・演出した舞台『カリフォルニア』に桑原が出演するなど、以前から交流があったものの、共作は初めて。信頼と緊張の間で脚本を書き上げた桑原、“攻め”の作品というバトンを渡された青木に話を聞く──。
桑原:企画内容は何転かしたんですけど、私が脚本で演出は別の方、という枠は最初からあって、劇場の方から「希望の人はいる?」と聞かれて、即答したのが豪さんでした。
青木:ありがとうございます!
桑原:理由は完全に、自分が役者として豪さんの演出を受けた経験です。青木さんは絶対に手を抜かないんですよ。「ここは出来上がっただろう」と思うようなシーンも、細かくこだわる。その時から「自分の本をこういう演出家さんにやってもらえたら幸せだな」と思っていたんですね。私が書くのは普通の会話劇ですし、人間関係がメインなので、細部の演出が雑になると印象がガラッと変わってしまう。そこで豪さんのこだわりを発揮してもらえたらと思いました。
青木:正直に言うと、僕はバラ(桑原)の本、好きなものと苦手なものがある。今回どっちが出てくるかは、かなりドキドキしたんだよね。ただ、自分から希望や方向性を言うことは控えました。
桑原:「せっかくだから、KAKUTA(桑原が主宰する劇団)で出来ないことをしたら?」ぐらいでしたね。ただ、そういうサラッとした言葉にも、圧みたいなものを私は感じていましたけど(笑)。「俺、最近、早く(脚本を)書けるようになったんだ」とか。
青木:え? 俺、そんなこと言った? ひどいな、ごめんね(笑)。
桑原:いえいえ、勝手に私がプレッシャーを感じていたんです。やっぱり優秀な劇作家でもある方なので、いちいち頭に浮かぶんですよ。何か書いては「へぇ、これがおもしろいんだ?」と思われるんじゃないか、「こういうエピソード、ありがちだよね」と笑われるに決まってる、とか(笑)。
青木:それ、すごくわかる。俺も本だけ書いて演出を人に任せる時はそうだもの。
桑原:だから書き上げてお渡ししたあとも、爽快感なんてまったく感じられずに落ち込んでいたんです。そうしたら早いタイミングで連絡があったんです、「おもしろかったよ」って。そこからはもう、「豪さん、大好き!」(笑)。
青木:読み終わってすぐに電話したんだよ。俺の好きなタイプというのを超えて「これは自分には書けない」と思う本だった。たとえば(高田)聖子さんが演じる宣子の母親みたいな人は、絶対に俺は書けない。そういう(自分には)書けないものが集まってるところが、まずよかった。それから時制がバラバラなところね。「KAKUTAではやらないものを」と言った理由のひとつに、バラの書くものは物語の時間がリアルタイムで流れていく傾向があって、それはそれでいいと思うんだけど、「小劇場の芝居にありがちな一幕物」とくくくられて終わってしまう心配があったから。ある時期、僕は「ONEOR8の青木さんってすごいよね」みたいなことを言われてさ(笑)。つまり本人は「あそこの劇団とは違う」「前の作品とは違う」と思っていても、身近な問題をテーマに一幕物をやっていたら、周りから見ると「ほとんど同じ」なんだよ。それを続けるのはつまらないと思ったから、思い切って言わせてもらった。結果、時間軸をバラバラにした本を書いてくれたことで、僕はそれを演出でどう見せられるんだろうというプラスαの仕事をちゃんともらえた感じがあって。だからこの本はすごくうれしかったんだよね。
桑原:自分で演出する時は「どのあたりに役者が立って……」というのを結構イメージして書くんですけど、今回は「青木さんが何とかしてくれるだろう」と。そういう意味で、自分の鎖をいくつかはずした部分はありましたね。バスが引っくり返って、その下から人が出てくるというシーンを書いたんですが、普通なら「舞台ではやりにくいだろう」と遠慮するところなのに、青木さんが「いつもと違うもの」と言ったんだから、きっと大丈夫だって。
青木:そういう(舞台では演出しづらい)ところは逆に「ああしよう、こうしよう」って頭が活性化する感じがあって楽しかったんだよ。「バラはたまたまこう書いたけど、深層心理的なところではどうなっているのか探りたいな」とか考えたら、いろいろアイデアが出てきてね。それと今の俺は、脚本のつじつまを合わせて上手く再現することがリアリズムだとは思えない。震災と原発事故以降、どうやったら現実をリアルだと思えるのかを考えているんだけど、この作品はその問題について具体的に考えさせてくれる機会になりそうで、書いてくれたバラにはお礼が言いたいです。
桑原:こちらこそ、圧をかけていただいてありがとうございました(笑)。
構成・文:徳永京子