『公共空間と劇場のポリティクス/対話編』
日本における公共劇場が、「公共」の「劇場」として機能し、日本の社会の中で成立していくために、あらためて向き合わなければならない「公共」という概念と演劇/劇場空間との関係性について考えるレクチャーシリーズです。
今回は、ゲストに弁護士の福田健治さんをお招きし、福島第一原発事故における周辺住民の避難の権利について検討し、国家と国民という関係において私たちの権利はどのように法的に担保されてあるのかを考えていきます。
どうぞふるってご参加ください。
日程 |
2012年 「震災・原発事故から国家と国民の関係を考える―私たちの権利とは何か」 2月28日(火)19時~21時30分 ゲスト:福田 健治(弁護士) 聞き手:鴻 英良(演劇評論家) ※ゲストのお話を出発点として、演劇評論家の鴻英良さんを聞き手にディスカッション形式で進めていきます。 |
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内容 |
「震災・原発事故から国家と国民の関係を考える―私たちの権利とは何か」 福島原子力発電所の事故は、極めて広範な放射性物質の飛散・沈着を引き起こし、放射能問題が新聞を賑わさない日はない。放射線による健康影響を前提として、政府は外部線量を基準とする線引きに基づき避難政策を実施している。しかし、ここには2つの憲法問題が横たわっている。第一に、国家はどのレベルの汚染であれば避難を「強制」することができるのか。第二に、個人はどのレベルの汚染であれば避難を「選択」することができるのか。これらの問題を考える前提として、汚染された地に居住していた・している人々が、国家との関係でいかなる権利を有するのかが問われなければならない。憲法は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を人々に保障し、社会権規約は「達成可能な最高水準の身体の健康を享受する権利」を確保するよう国家に求めている。これらの人権は、避難に関する決定の分権化と、「権利としての避難」を要求するのではないか。(福田 健治) 演劇はそもそもの始まりからきわめて公共的な性格を帯びていました。より善い生活を人間が送るためにはどのような社会を作ればいいのか、それを構想する場として登場してきたのがギリシア悲劇でした。ギリシア悲劇を読めば、より善い生き方をするためにはどのような社会の構造を作っていけばいいのかがそれほど簡単に解決できる問題ではないことがよくわかります。ところで悲劇によって構想されたポリスの在り方が現実にどのようなものになっていったのか、そうした現実を分析するために、アリストパネースの喜劇が登場してくるのです。演劇はそのような意味で、人間の生活を考えるための重要な場であったのです。 ところで、3・11を生きている私たちは、どのような形で、この大惨事を生き抜くことができるでしょうか。そのことを考えることなしに、われわれの生活も、芸術的な活動もありえないと私は考えています。とはいえ、そのことをどのような側面から考えていくべきかということになると、そこには無数の選択肢があるし、さらにいえば、考えなくてはならない無数の側面があります。そのなかには、そのことを法的な側面から考えるべきだという視点もあるのではないかと私は思ってきました。「罪の靄の中からゲーニウス(人間的言語精神)がまず立ち現われてきたのは、法においてではなく、ギリシア悲劇においてであった」とドイツの思想家ベンヤミンが書いたように、ギリシア悲劇のなかから、法的な判断が登場してきたのだそうです。演劇はそのような意味でも深く公共性と関わっているのです。 そして、今回の原発事故をめぐるさまざまな動きの中で、私はそのような意味での法的判断のもとに照らしてみた場合、あまりにも問題の多いことがまかり通っているのではないのかと、法律の専門家でないながらも、素人的に考えてきました。つまり、原発事故にたいする対応のなかには、法的にも問題であることが無数にあるのではないかと私は疑っているのです。私はそうした疑問を、具体的な事例を取り上げながら、法律の専門家の方にぶつけ、いろいろなことを尋ねたいと思ってきました。今回それが実現することになりました。原発事故と人間の権利の主張、そして、東電・政府・マスメディアなどの振る舞いの問題点について、演劇と法との関係と関連させつつ、聞いていくことになると思います。さらに、それをどのように判断しつつ 演劇活動につなげていくべきかを私は考えていくことになるでしょうが、そのためには、こうした問題に深くかかわっている福田健治弁護士に問いかけていくことがきわめて重要なことだと私は考えています。(鴻 英良) |
場所 | 世田谷文化生活情報センター セミナールームA(三軒茶屋駅前キャロットタワー5階) |
講師 |
《プロフィール》 福田 健治(ふくだ けんじ) 弁護士(第二東京弁護士会)、ニューヨーク州弁護士、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク運営委員、日弁連原子力プロジェクトチーム委員、NPO法人メコン・ウォッチ副代表理事。環境NGO職員として4年間勤務した後、法科大学院を経て弁護士として環境問題に関わる。福島原発事故後、いわゆる「自主的避難」問題に取り組んできた。 鴻 英良(おおとり ひでなが) 演劇評論家。著書に『二十世紀劇場―歴史としての芸術と社会』(朝日新聞社)、野田秀樹との共著に『野田秀樹;赤鬼の挑戦』(青土社)、巻上公一との編著に『反響マシーン:リチャード・フォアマンの世界』(けい草書房)、翻訳に『イリヤ・カバコフ自伝-60年代-70年代、非公式の芸術』(みすず書房)、『タルコフスキー日記』(キネマ旬報社)など。 |
参加費 |
1,000円 ※受講当日に会場にてご精算いただきます。 ※ポイントカード対象レクチャーです。ポイントカードとは世田谷パブリックシアターのレクチャーを5回受講頂くと、1 回無料で受講頂けるお得なカードです。 |
募集人数 |
40名程度 ※先着順に受付いたします。定員に達し次第、受付を終了いたしますので、あらかじめご了承ください。 |
申込み方法 | 以下申込みフォームか、または劇場(03-5432-1526)までお申込みください。 |
お問合せ | 世田谷パブリックシアター学芸 03-5432-1526 |
備考 | [協賛] アサヒビール株式会社/東レ株式会社 |
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