ワークショップ・レクチャー

シリーズ講座『日本の公共劇場を考える』
パブリックシアターのためのアーツマネジメント講座2009

多目的ホール、貸し館運営を中心とした公共文化会館から一線を画した「公共劇場」が全国各地に生み出されるようになってから十数年がたちました。しかし、各公共劇場がそれぞれの地域で果たしている役割そして課題は、劇場を取り巻く環境によって異なります。講座シリーズ『日本の公共劇場を考える』は、異なる専門分野の講師をお招きし、日本の文化政策、地方自治体との関係、法律、歴史などさまざまな切り口より、各地域の公共劇場に共通する「公共劇場」について再考し、現在抱える課題について考えていきたいと思います。

※担当講師変更のお知らせ(6月30日付)
7月30日(木)の担当講師が木村直樹(文化庁文化部芸術文化課文化活動振興室長)から小松圭二(文化活動専門官)に変更になりました。講演内容に変更はございません。ご迷惑をおかけしますがご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。

 
 
日程 2009年
(1)Vol.1 「地域に残すための劇場・音楽堂を育てる―公設から公共へ」
5月14日(木)・19日(火)19時~21時
講師:草加叔也(空間創造研究所代表)

(2)Vol.2 「公共劇場を規定する法律」
5月29日(金)19時~21時
講師:小林真理 (東京大学大学院人文社会系研究科准教授)

(3)Vol.3 「公共劇場の誕生」
6月4日(木)19時~21時
講師:高萩宏(東京芸術劇場副館長)

(4)Vol.4 「公益法人改革―新制度にどう向き合うか」
7月7日(火)19時~21時
講師:片山正夫(財団法人セゾン文化財団常務理事)

(5)Vol.5 「この社会において演劇作品を創ること」
7月14日(火)19時~21時
講師:松井憲太郎(演劇評論家)

(6)Vol.6 「文化行政からみた公共劇場」
7月30日(木)19時~21時
講師:小松 圭二(文化活動専門官) ※講師が変更になりました

(7)Vol.7 「財政から見た文化、芸術」
8月25日(火)19時~21時
講師:金谷裕弘(政治資金適正化委員会事務局/元財団法人地域創造)

(8)Vol.8 「公共劇場の『公共性』を、原点から再考する」
9月11日(金)19時~21時
講師:伊藤裕夫(富山大学芸術文化学部教授)
 
 
内容 (1)Vol.1 「地域に残すための劇場・音楽堂を育てる-公設から公共へ」
市民会館、公共ホール、文化会館。私たちが住む地域には、地域の自治体が整備した公設の劇場や音楽堂が点在する。これらの施設は一体どんな目的で建てられ、どんなことが行われ、あるいは利用されているのだろうか。実は、公設の劇場・音楽堂は全国に2,200施設ほどが既に整備されている。しかし、今この公設の劇場、音楽堂が大きく揺らぎ、その震源が行政改革や規制緩和に起因する。果たして舞台芸術、音楽芸術は生き残れるのか。PFI法、文化芸術振興基本法、地方自治法244条の2改正、市町村合併特例法、公共サービス効率化法、公益法人制度改革。この荒波を乗り越え、地域に残すための劇場・音楽堂には、何が必要か、何が変らなければならないのかを考える。

(2) Vol.2 「公共劇場を規定する法律」
戦後日本において文化を担う施設として建設されてきたものに博物館、美術館、そして図書館というものがあります。文化会館と呼ばれる舞台芸術を主目的とした施設が全国規模で展開されるようになるのが1980年代に入ってからのことですが、この施設ほど法的に脆弱なものはありません。なぜそのような位置づけになっているのかを知ること、また現在これらの施設がどのような法的な枠組みによって規定されているかを知ることは、運営の方法を考えていく上で重要になります。公立の文化会館、劇場が建設されてきた経緯を振り返りつつ、日本の舞台芸術振興の問題点を法的側面から明らかにします。

(3)Vol.3 「公共劇場の誕生」
集会施設として始まった日本の「公立文化施設→公共劇場」の歴史を概観し、90年代に拡大した文化庁の補助金政策の流れの中での公共劇場の位置づけをみていきます。そして、2003年から導入された公共施設の指定管理者制度とその影響について、さらに、指定管理者制度を乗り越える試みとして博物館法・図書館法を同じように、単なる公の施設と区別して、劇場法を新たに作ろうという運動の現在の状況を世田谷パブリックシアター、東京芸術劇場と13年にわたって公共劇場の運営に携わった経験からお話しする。

(4)Vol.4 「公益法人改革―新制度にどう向き合うか」
2008年12月、新しい公益法人制度が施行されました。民間による非営利活動を活性化することを目的とした今回の改革は、これまでにない画期的な内容を含むものです。しかし一方で現場からは、運営ルールの厳格さ、実務の煩雑さなど、いくつかの問題点も指摘されています。今回はそのようななかで、この改革の意味やその背景を、もう一度大きな流れの中で捉え、今後予測される舞台芸術界への影響や、われわれが今後どんなビジョンを持ってこの変化に対応していくべきかを、皆さんとともに考えたいと思います。

(5)Vol.5 「この社会において演劇作品を創ること」
日本の現代演劇の世界や公共劇場において、演劇作品を創造することの意味を、演劇や劇場の歴史をひもときながら考えていきます。そして現在の日本においては多くの場合、演劇が私的な表現行為にとどまり、社会的ないしは公共的な表現行為に発展していかない理由も概観します。その上で、いま演劇が公共性をおびた表現 や芸術の創造活動として成立するために必要な条件を洗い出してみます。それは日本の演劇の世界に「レパートリー」という概念を生み出し、それを現実の作品として結実させていく方途を探る試みへと繋がっていくでしょう。

(6)Vol.6 「文化行政からみた公共劇場」
地域文化の振興は、文化政策における重点事項の一つであり、各地域の劇場は文化芸術の鑑賞や参加、創造活動の拠点として重要な役割を担っている。しかし、ハード面では全国的に文化施設の整備が進められてきたものの、文化芸術活動を地域社会に根付かせていくためのソフト面の充実は十分とは言い難い。文化芸術を鑑賞する機会も東京など大都市に偏りがちで、地方では文化芸術活動への支援が縮小傾向にあるなど、劇場をめぐる環境は厳しさを増してきている。他方、東京は世界でも有数の公演数の多い都市との指摘もあるが、劇場ではそれに見合った質の高い公演を供給し、観客のニーズを十分満たしているのだろうか。我が国の文化政策が目指している方向を改めて確認した上で、文化政策から公共劇場の役割や機能を捉え、その振興方策を考えてみたい。

(7)Vol.7「財政から見た文化、芸術」
100年に一度といわれる経済状況にある現在、特に、公立劇場にとっては、厳しい地方公共団体の財政状況から、必要な経費の確保が大変困難な状況になっている。こうした状況にあって、いわゆる「査定側」といわれる財政セクションがどのようなスタンス、論理で様々な財政需要について判断するのか、その基本的な考え方を整理し、公立劇場にとっての難題解決(にはほど遠いでしょうが)の一助となる話をしたい。

(8)Vol.8「公共劇場の『公共性』を、原点から再考する」
公共劇場の「公共性」を、演劇が本来有していた公共性──演劇とは本質的に「共同体(コミュニティ)」と深く関わっている芸術であり、それは共同体の「記憶」の再現や、ある個人の「思い」への共感を通して、演じ手と観客が共同でつくる世界──から検討し、「幻想としてのコミュニティ」の形成の場としての「公共劇場」という文化制度の今日的意味を考えたい。

 
 
場所 世田谷文化生活情報センター
(1)ワークショップルームA
(2)~(8)セミナールーム
 
 
講師 ≪プロフィール≫
(1)草加叔也(くさかとしや)
1957年倉敷生まれ。劇場・音楽堂など地域の芸術拠点づくりに関わるとともに、ピーター・ブルック、ピナ・バウシュなどの演出による日本公演で技術監督等を努める。
1989年芸術家在外研修員として渡英。現在、劇場コンサルタント/空間創造研究所代表として活動。

(2)小林真理(こばやしまり)
東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専門は、文化政策と法、文化政策学、文化資源学。文化の発展を支える、あるいは阻害する制度を研究。主な著書に『文化権の確立を目指して―文化振興法の国際比較と日本の現実』、『指定管理者制度:文化的公共性を支えるのは誰か』、『アーツマネジメント概論』など。

(3)高萩宏(たかはぎひろし)
東京芸術劇場副館長。多摩美術大学映像演劇学科客員教授。学生時代の1976年、劇団「夢の遊眠社」設立に参加し、89年に独立。91年英国でのジャパンフェスティバル舞台芸術部門ディレクター、92年~93年コロンビア大学アーツマネジメント学科留学。その後、パナソニック・グローブ座制作担当支配人、世田谷パブリックシアターゼネラル・プロデューサーなどを歴任、2008年4月より現職。

(4)片山正夫(かたやままさお)
1958年生まれ。一橋大学卒業後、㈱西武百貨店を経て1989年(財)セゾン文化財団事務局長に就任。2003年より常務理事。東京藝術大学等での非常勤講師のほか、(財)公益法人協会理事、東京都芸術文化評議会専門委員等を務める。近著に「民間助成イノベーション」(共著)等。

(5)松井憲太郎(まついけんたろう)
演劇制作、評論活動を劇団黒テントで始め、世田谷パブリックシアターでは1997年の開館から公演企画と教育普及の事業を統括。2008年に同劇場を離れ、現在はアジア演劇創造研究センターを設立して、国内外の演劇の共同作業や交流を進める。早稲田大学、学習院大学で非 常勤講師を務める。

(6)小松 圭二(こまつ けいじ)
昭和39年福岡県生まれ。昭和58年大分大学採用。佐賀医科大学勤務後、平成4年文部省転任、大臣官房政策課情報処理室、放送大学学園、信州大学、国立教育政策研究所などを経て平成21年4月から文化庁芸術文化課文化活動振興室文化活動専門官に就任、現在に至る。大分大学在任中、コンサートなどのイベントを行う市民サークル活動に参加。

(7)金谷裕弘(かなだにやすひろ)
昭和33年岡山県生まれ。昭和56年自治省(現総務省)入省。平成12年自治省財政課参事官兼企画官、総務省大臣官房政策評価広報課企画官、愛媛県総務部長、総務省消防庁防災課長を経て平成20年7月(財)地域創造事務局長に就任。現在、政治資金適正化委員会事務局に至る。

(8)伊藤裕夫(いとうやすお)
富山大学芸術文化学部教授。東京大学文学部卒後、(株)電通入社。プランニング室、PR局企画部を経て、1988年より電通総研へ出向、アーツマネジメント、文化政策、および民間非営利活動を主な研究テーマとして取り組む。2000年より静岡文化芸術大学教授就任、同大学大学院文化政策研究科教授を経て、2006年より現職。著書に、『NPOとは何か』、『文化経済学』、『アーツマネジメント概論』他。

 
 
参加費 (1)3000円(全2回)
(2)~(8)各回1,500円
 
 
募集人数 40~60名
※先着順に受付いたしておりますが、万が一定員に達してご参加いただけない場合はご連絡いたします。
 
 
申込み方法 以下申込みフォームか、または劇場(03-5432-1526)までお申込みください。
 
 
お問合せ 世田谷パブリックシアター学芸 03-5432-1526
 
 
備考 [助成] アサヒビール芸術文化財団
 
 
受付は終了致しました。
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